アンリ・ジファール

バティスト・ジャック・アンリ・ジファール：動力飛行のパイオニア

バティスト・ジャック・アンリ・ジファール (1825年2月8日 - 1882年4月14日) は、フランスの技術者であり、世界で初めて蒸気機関を搭載した有人飛行船による動力飛行に成功した人物として知られています。彼の業績は、航空史において重要な転換点となりました。

パリに生まれたジファールは、1849年から蒸気機関の研究に没頭し、1850年には蒸気機関用の噴射装置を発明するなど、早くからその才能を発揮しました。1851年にはエコール・サントラルと共同で、蒸気機関を用いた気球操縦に関する特許を取得。そして1852年9月24日、パリとトラップ間の27kmを、3馬力の蒸気エンジンを搭載した約2,500立方メートルの気球で飛行することに成功しました。これは、人類史上初の動力飛行として記録されています。

この画期的な成功の後も、ジファールは飛行船の開発を続けました。1855年には新たな飛行船を製作しましたが、試験中に爆発事故が発生。幸いジファールと乗員は無事でした。その後は蒸気機関用噴射装置の改良に注力し、数々の特許を取得。1858年には蒸気機関のインジェクタを発明するなど、技術者としての才能を遺憾なく発揮しました。

ジファールの技術は、大型気球の製作にも応用されました。1867年のパリ万国博覧会では、直径約12メートル、5,000立方メートルの水素気球を製作し、さらに1869年にはロンドンで直径約15メートル、12,000立方メートルの気球を製作しました。そして1878年のパリ万国博覧会では、その技術の集大成ともいえる、直径約20メートル、25,000立方メートルの巨大な気球を展示。この気球はなんと40人を乗せて浮揚することができ、博覧会の目玉として大いに賑わいました。1日に10回もの飛行を行い、500メートルほどの高度まで客を乗せて上昇させました。来場者へのサービスとして、気球に使用する水素発生器で膨らませたゴム風船を無料で配布するなど、博覧会を盛り上げる演出にも一役買っています。

ジファールは、1882年に自殺しました。彼の功績は現在も高く評価されており、エッフェル塔には彼の名前が刻まれています。蒸気機関による動力飛行という偉業は、後の航空技術の発展に大きな影響を与え、現代の航空産業の礎を築く上で重要な役割を果たしたといえるでしょう。彼の先駆的な取り組みは、人類の空への挑戦の歴史において、永遠に記憶されるべきものです。

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