アンリーシュ・ザ・フューリー

アンリーシュ・ザ・フューリー

『アンリーシュ・ザ・フューリー』（Unleash the Fury）は、ネオクラシカルメタル界の重鎮、イングヴェイ・マルムスティーンが2005年に発表した、キャリア通算15作目にあたるスタジオ・アルバムです。本作は「イングヴェイ・マルムスティーンズ・ライジング・フォース」名義でリリースされ、長年所属していたポニー・キャニオンからユニバーサルミュージックへとレコード会社を移籍して最初に発表された作品となりました。

アルバムタイトルの由来

このアルバムの印象的なタイトルは、イングヴェイ・マルムスティーン自身にまつわる非常に有名なエピソードから採られています。その出来事は、1988年のオデッセイ・ツアーにおける日本公演のため、東京へ向かう飛行機内（ファーストクラス）で起こりました。

当時、同じ飛行機に搭乗していたバンドメンバーたちは、機内で酒を飲んで泥酔し、周囲の乗客に迷惑をかけていました。その騒ぎから離れ、一人静かに眠りについていたイングヴェイに対し、偶然その場に居合わせたバンドとは全く関係のない女性乗客が、誤って彼に水をかけてしまったのです。これに激しく怒ったイングヴェイは、その女性に向かって「You unleashed the fucking fury!!」（日本語に訳すと「お前は俺の怒りを解き放った!!」）と叫んだとされています。

この時のイングヴェイの怒りの発言を録音した音声は、後に2001年にインターネット上で流出し、ファンの間で伝説的なエピソードとして広まることとなりました。さらに、この音声は他のミュージシャンにも影響を与えています。2016年7月30日にスウェーデンで開催されたHojRock Festivalに出演したバンド、Allegiance Of Rock（ヴォーカル：Mats Levén、ギター：Gus G、ベース：John Levén、ドラム：Anders Johansson）は、彼らがRising Forceの楽曲を演奏する際のSE（サウンドエフェクト）として、この時の録音音声を実際に使用しました。

音楽的な特徴

アルバムにはインストルメンタル楽曲として「Fuguetta」や「Paraphrase」などが収録されています。これらの楽曲について、イングヴェイ自身はヨハン・セバスチャン・バッハの作品から着想を得て制作した、一種のバリエーションであると解説しています。これは、彼の音楽の根底にあるクラシック音楽からの影響が色濃く反映されていることを示しています。

参加ミュージシャン

本作の制作には、以下のミュージシャンが参加しています。

イングヴェイ・マルムスティーン
ギター
ベース
フレットレス・ベース
シンセサイザー・ギター
シタール
チェロ
キーボード
コーラス
ヴォーカル（#3, #9）
バッキング・ヴォーカル
ドゥギー・ホワイト
ヴォーカル
ヨアキム・スヴァルベリ
キーボード
パトリック・ヨハンソン
* ドラム

イングヴェイ自身がギターはもとより、ベース、チェロ、キーボードといった多様な楽器を演奏し、一部楽曲でヴォーカルも担当するなど、マルチプレイヤーとしての才能を発揮している点が特徴です。

本アルバムは、彼の代名詞である超絶的なギタープレイと、タイトルに込められた情熱的なエピソードが一体となった作品と言えるでしょう。

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