アンリ1世 (バル伯)

アンリ1世：バル伯、十字軍の戦士

アンリ1世（Henri Ier, 1158年 - 1191年）は、中世フランスのバル伯として知られています。彼はムッソンおよびアマンスの領主でもあり、1170年から1191年までこれらの地を統治しました。父はバル伯ルノー2世、母はシャンパーニュ伯の娘アニェス・ド・シャンパーニュという、由緒ある家系の出身です。

若き日の苦難と領土を巡る争い

父ルノー2世の死後、幼いアンリ1世はバル伯位を継承します。そのため、母アニェスが1170年から1173年まで摂政としてアンリ1世を支えました。アンリ1世はヴェルダン伯の子孫であったことから、母アニェスは1172年にヴェルダン司教に対しヴェルダン伯領の返還を要求しますが、司教はこれを拒否。これに対しアニェスはヴェルダン司教領を荒廃させるという強硬手段に出ます。この行為により、アニェスとアンリ1世は破門されるという厳しい処分を受け、最終的に1177年に降伏を余儀なくされました。

ロレーヌ公との関係

1178年、トゥール司教はロレーヌ公シモン2世の承認を得て、リヴェルダンに要塞の建設を開始しました。しかし、その規模の大きさに驚いたトゥール司教は、建設をアンリ1世に委ねます。このことはロレーヌ公との良好な関係を損なうものではありませんでしたが、ロレーヌ公はリヴェルダン、ムッソン、アマンスの要塞を潜在的な脅威と見なしていたと考えられます。

フランス王室との繋がり

母アニェスを通して、アンリ1世はフランス王フィリップ2世の従兄弟にあたります。1179年11月1日、ランス大司教で枢機卿のギヨーム・ド・ブロワが執り行ったフィリップ2世の戴冠式に、アンリ1世も参列しました。

第3回十字軍への参加と最期

1187年にエルサレムがサラディンによって奪われた後、アンリ1世は第3回十字軍に参加を決意します。1189年半ば、アンリ1世はフランス王フィリップ2世やイングランド王リチャード1世に先駆けて出発し、エルサレム王国がまだ保持していた領土に到着。アッコ包囲戦に加わりました。1190年夏には、ブロワ伯ティボー5世、サンセール伯エティエンヌ1世、シャンパーニュ伯アンリ2世も合流。しかし、1190年10月4日、アンリ1世は対サラディン戦において重傷を負い、その傷がもとで1191年に死去しました。

アンリ1世の生涯は、領土を巡る争い、王室との繋がり、そして十字軍への参加という、中世ヨーロッパの領主の姿を色濃く反映しています。

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