ロレーヌ公

ロレーヌ公国とその歴史

ロレーヌ公国（またはロートリンゲン公国）は、現在のフランス北東部、ロレーヌ（ロートリンゲン）地方に存在した公国です。その君主はロレーヌ公（またはロートリンゲン公）と呼ばれ、この地域は歴史的にフランスとドイツの国境に位置していたため、両国の影響を受けながら複雑な歴史を歩んできました。

公国の成立

ロレーヌという名前は、9世紀にフランク王国が分裂した際、中フランク王ロタール1世の次男ロタール2世に与えられたロタリンギアに由来します。ロタリンギアは、現在のベネルクス地域とライン川左岸一帯を包含する広大な領域でした。ロタール2世の死後、ロタリンギアは東西フランク王国に分割されますが、後に東フランク王国の支配下に入ります。925年、東フランク王ハインリヒ1世によって、レニエ家のギゼルベルトがロタリンギア大公に任じられ、ロタリンギアは東フランク王国に帰属することが決定しました。

オットー大帝の支配とロタリンギアの分割

10世紀、ロタリンギアはオットー大帝の支配下に置かれます。939年には、当時のロタリンギア大公ギゼルベルトが反乱を起こしますが、オットー大帝によって鎮圧され、オットーの娘婿であるコンラート赤毛公が新たな大公に任命されます。その後、コンラートが反乱を起こすと、オットー大帝は自身の弟であるケルン大司教ブルーノを大公に任命し、ロタリンギアは上下に分割されます。959年、下ロタリンギア辺境伯にはゴドフロワが、上ロタリンギア辺境伯にはフレデリックがそれぞれ任命され、両者とも965年に大公に昇格しました。以後、ロタリンギアは、ライン川左岸を中心とする上ロタリンギアと、ベネルクスを中心とする下ロタリンギアの二つの地域に分裂して発展することになります。

上下ロタリンギアの変遷

11世紀には、上ロタリンギア公フレデリック3世が後継者なく死去したため、皇帝コンラート2世は下ロタリンギア公ゴデロン1世に上ロタリンギアを与え、一時的に上下ロタリンギアが統合されます。しかし、ゴデロン1世の死後、皇帝ハインリヒ3世は再びロタリンギアを分割し、上ロタリンギアはゴドフロワ3世に、下ロタリンギアはゴデロン2世に相続させます。この分割相続をめぐってゴドフロワ3世はハインリヒ3世と争い、結果的に上ロタリンギアはシャトノワ家のアダルベールに与えられ、以後、上ロタリンギア公位はロレーヌ公位としてシャトノワ家が世襲することになりました。

下ロタリンギア

下ロタリンギアは、12世紀にはルーヴァン伯が世襲するようになり、この頃からブラバント公とも呼ばれるようになります。下ロタリンギアの歴史は、ブラバント公国の歴史に引き継がれます。

ロレーヌ公国（上ロタリンギア）の終焉

上ロタリンギアは、11世紀から12世紀にかけてメッツ伯家（シャトノワ家）が世襲するようになり、この頃から「ロレーヌ」と呼ばれるようになります。ロレーヌ公国は1766年まで存続しましたが、ポーランド継承戦争の結果、ロレーヌ公フランソワ3世エティエンヌ（後の神聖ローマ皇帝フランツ1世）は、ポーランド王スタニスワフ・レシチニスキに公位を譲りました。1766年にスタニスワフが死去すると、ロレーヌ公国はフランスに併合され、その歴史に幕を閉じました。

ロレーヌのその後

その後、ロレーヌは1871年の普仏戦争の結果ドイツ帝国に編入されますが、1919年のヴェルサイユ条約によってフランス領に復帰しました。ロレーヌ公国は消滅しましたが、その歴史は今もなお、この地域の文化や歴史の中に深く根付いています。

ロタリンギア大公一覧

ゲープハルト (903年 - 910年)
レニエ1世 (910年 - 915年)
ギゼルベルト (915年 - 939年)
ハインリヒ1世 (939年 - 940年)
オットー・フォン・ヴェルダン (940/2年 - 944年)
コンラート (944年 - 953年)
ブルーノ (953年 - 965年)

下ロタリンギア公一覧

ゴドフロワ (1世) (959年 - 964年)
リシェ・ド・モンス (964年 - 973年)
シャルル (1世) (976年 - 991年)
オトン (991年 - 1012年)
ゴドフロワ2世 (1世) (1012年 - 1023年)
ゴデロン1世 (1023年 - 1044年)
ゴデロン2世 (1044年 - 1046年)
フレデリック (1046年 - 1065年)
ゴドフロワ3世 (2世) (1065年 - 1069年)
ゴドフロワ4世 (3世) (1069年 - 1076年)
コンラート (1076年 - 1087年)
ゴドフロワ5世 (4世) (1087年 - 1100年)
アンリ (1101年 - 1106年)
ゴドフロワ6世 (5世) (1106年 - 1129年)
ヴァルラム (1129年 - 1139年)
ゴドフロワ7世 (6世) (1139年 - 1142年)
ゴドフロワ8世 (7世) (1142年 - 1190年)

上ロタリンギア公一覧

フレデリック1世 (959年 - 978年)
ティエリー1世 (978年 - 1026/1027年)
フレデリック2世 (1019年 - 1026年)
フレデリック3世 (1026/1027年 - 1033年)
ゴテロン (1033年 - 1044年)
ゴドフロワ (1044年 - 1047年)

ロレーヌ公一覧

アダルベール (1047年 - 1048年)
ジェラール (1048年 - 1070年)
ティエリー2世 (1070年 - 1115年)
シモン1世 (1115年 - 1138年)
マチュー1世 (1138年 - 1176年)
シモン2世 (1176年 - 1205年)
フェリー1世 (1205年 - 1206年)
フェリー2世 (1206年 - 1213年)
ティボー1世 (1213年 - 1220年)
マチュー2世 (1220年 - 1251年)
フェリー3世 (1251年 - 1302年)
ティボー2世 (1302年 - 1312年)
フェリー4世 (1312年 - 1329年)
ラウル (1329年 - 1346年)
ジャン1世 (1346年 - 1390年)
シャルル2世 (1世) (1390年 - 1431年)
イザベル (1431年 - 1453年)
ルネ1世 (1431年 - 1453年)
ジャン2世 (1453年 - 1470年)
ニコラ1世 (1470年 - 1473年)
ヨランド (1473年)
ルネ2世 (1473年 - 1508年)
アントワーヌ (1508年 - 1544年)
フランソワ1世 (1544年 - 1545年)
シャルル3世 (2世) (1545年 - 1608年)
アンリ2世 (1608年 - 1624年)
ニコル (1624年 - 1625年)
フランソワ2世 (1625年)
シャルル4世 (3世) (1625年 - 1634年)
ニコラ2世 (1634年 - 1661年)
シャルル4世 (3世) (1661年 - 1675年)
シャルル5世 (4世) (1675年 - 1690年)
レオポール1世 (1690年 - 1729年)
フランソワ3世エティエンヌ (1729年 - 1737年)
* スタニスラス (1737年 - 1766年)


このリストは、ロレーヌ公国の歴史を彩った歴代の君主たちを網羅しています。彼らの治世は、公国の興亡だけでなく、ヨーロッパ全体の政治情勢にも大きな影響を与えました。

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