アンワールの戦い

アンワールの戦い

アンワールの戦い（Desastre de Annual）は、スペイン王国がベルベル人の部族国家リーフ共和国に対して行った戦闘であり、歴史的な敗北として知られています。この戦闘は、第3次リーフ戦争の一部として1921年前半に展開され、スペインにとって衝撃的な結果をもたらしました。この敗北は、近代のスペインの衰退を象徴し、国内の不安定さや後に続く内戦の土壌を作ることになりました。

背景

かつての植民地大国であるスペイン帝国は、19世紀から徐々に衰退の道を歩んでいました。20世紀初頭には、工業や経済、技術の面で他の欧州主要国に大きく遅れをとり、さらにイベリア半島内での地方対立や民族運動が激しさを増していました。しかし、強権的な君主アルフォンソ13世の下で、国威を高めるために対外進出が推進され、スペイン領モロッコの支配強化がその第一歩となりました。この時期、リーフ地方ではベルベル人による反乱が続いており、スペインはこの反乱に対して攻撃を仕掛けることにしました。

戦況

進軍と敗北

1921年の初め、スペイン軍がモロッコ北東部に攻撃を開始しました。しかし、司令官マヌエル・フェルナンデス・シルベストロは物資や食料の補給線を十分に整備せず、占領地の管理も不十分でした。その結果、2万人以上のスペイン兵がリーフ族の民兵に包囲され、迅速に補給が枯渇しました。リーフ族の指導者アブド・アルカリームの率いる民兵による猛攻撃を受け、シルベストロ将軍が失踪したことで混乱はさらに深刻化しました。士気を失ったスペイン軍は敗走を始め、数的優位にもかかわらずベルベル兵に打ち破られました。

リーフ軍の追撃

退却を余儀なくされたスペイン兵たちは、一部の者はフランス領モロッコへ逃れることができたものの、大半はモンテ・アルチへと退却しました。ここでリーフ軍によって再度包囲され、フェリペ・ナバーロ副司令官は降伏を求めましたが、リーフ軍はこれを拒否し攻撃を続けました。この混乱の中、多くのスペイン兵や民間人が命を奪われ、フェリペ将軍も捕らえられる事態となりました。また、モロッコ保護領の後方司令部は援助を行わず、戦局はますます厳しくなりました。

戦後、メリリャ市に対するリーフ軍の逆襲が始まりましたが、スペインの後方支援が乏しく、戦闘は長期化しました。最終的に、スペイン軍は2万人以上の兵士を失い、また多数の武器も鹵獲されました。一方、リーフ側は約1000人の損失を出したとされます。

戦後処理

敗北の影響は瞬時に政治的な混乱を引き起こしました。国防大臣は敗北責任を探る調査委員会を設立し、ファン・ピカソ・ゴンサーレス将軍が委員長に任命されました。彼は多くの失敗をレポートにまとめて公表しましたが、政治的圧力から軍の責任追及は行われませんでした。国王アルフォンソ13世が進軍を奨励していたことも発覚し、国民の不満は高まりました。このような状況は最終的に王政の廃止や内戦へと繋がり、スペインの近代史において大きな転換点となりました。

まとめ

アンワールの戦いは、スペインの植民地支配の方針を大きく変える出来事となり、国内の不安定さを際立たせる結果となりました。国家の威信の低下は、後の歴史においてスペインが直面するさらなる困難を予感させるものでした。

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