ベルベル人

ベルベル人

ベルベル人（ベルベルじん）は、北アフリカの広大なマグレブ地域に古くから居住する先住民族の総称であり、アフロ・アジア語族に属するベルベル諸語を母語としています。現代の北アフリカではアラブ人が多数派を占めていますが、ベルベル人は彼らの独自の文化と伝統を保持しつつ、1000万から1500万人に及ぶ人口を有しています。彼らの多くはイスラム教を信仰しています。

名称について

「ベルベル人」という名称は、ローマ帝国時代にローマ人が用いていた蔑称に由来しており、もともとはギリシャ語の「バルバロイ」（わけのわからない言葉を話す者）に由来しています。彼ら自身は「アマーズィーグ」または「アマジグ」と呼ばれ、この名称から生成された他の呼称も存在します。

居住地域と部族

ベルベル人は主にカビール、シャウィーア、ムザブ人、トゥアレグの4つの主要部族に分類されます。さらに、リーフ人やシェヌアスなど数多くの部族が存在し、砂漠地帯からモロッコ全土、さらにはニジェール川方面にまで広がる広範囲に分布しています。彼らの居住地域は、北アフリカ諸国（モロッコ、アルジェリア、リビア、チュニジア、モーリタニアなど）を含む、サハラ砂漠以北に広がっています。

モロッコでは国民の約半数、アルジェリアでは約5分の1がベルベル人です。また、ベルベル系の移民はヨーロッパ（フランスやオランダ、ベルギー）や北米（カナダなど）にも広がっています。

歴史

ベルベル人の祖先は、先史時代においてカプサ文化（約1万年前から4000年前）を築いたと考えられています。彼らは、フェニキア人や古代エジプト人との関わりを持ちながら、長い歴史の中でさまざまな外部の勢力に対して抵抗してきました。特に紀元前10世紀頃からは、フェニキア人との交易や傭兵活動を通じて彼らの影響を受けました。

その後、ローマ帝国の侵攻が始まり、ヌミディアやマウレタニアといった地域で以降の歴史が展開します。ローマ帝国の支配下において、ベルベル人はラテン語やキリスト教を徐々に受容し、文化的な変化を遂げました。

7世紀には、アラブ人のイスラム教徒がベルベル人の土地を征服し、大規模な戦闘の後、彼らもイスラム教を受け入れることとなりました。その結果、ベルベル語は次第に公用語のアラビア語に取って代わられ、文化的なアイデンティティが変化していきました。

ベルベル人は、例えば711年にアンダルスにおいて起こった重要な戦闘で、少なからぬ数のイスラム軍の兵士として活躍しました。彼らの貢献が現地文化にも大きな影響を与え、その後も様々な王朝を興すなど、歴史の中で重要な役割を果たしました。

近代史

15世紀以降、イベリア半島で起こったモリスコ追放は、ベルベル人を含むイスラム教徒に大きな影響を与え、その後、オスマン帝国の支配を経て、19世紀にはフランス植民地の統治を受けることとなります。この時期、ベルベル人はアラブ人とともに、植民地支配に対して抵抗運動を展開しましたが、独立後にはアラブ化政策によって文化的な圧力を受けました。

現代

20世紀後半には、ベルベル文化を守るための運動が始まり、彼らのアイデンティティの再評価が進められています。ベルベル人の遺伝子は、Y染色体ハプログループE1b1b系統が多数確認されており、彼らの独自の文化と歴史を今に伝えています。

著名なベルベル人にはヌミディア王のマシニッサや、多くの歴史的人物がいます。彼らの歴史と文化は、現代でも北アフリカの重要な要素として存在し続けています。

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