アン・ウィルソン

アン・ウィルソンとは

アン・ウィルソン（Ann Wilson、1950年6月19日 - ）は、アメリカ合衆国を代表する女性シンガーソングライターであり、伝説的なロックバンド、ハート（Heart）のリードボーカルを務めています。妹のナンシー・ウィルソンは同バンドでギタリストとして活動しており、姉妹でハートの中心的存在として長きにわたり音楽シーンを牽引してきました。

来歴

1950年6月19日、カリフォルニア州サンディエゴに誕生した彼女は、海兵隊大佐であった父親の勤務に伴い、幼少期から各地を転々とする生活を送りました。やがて、ワシントン州シアトル郊外のベルビューに落ち着きます。音楽に情熱を燃やしていたアンは、1974年、妹のナンシーらと共にロックバンド『ハート』を結成。その圧倒的な歌唱力と存在感で、グループのサウンドを特徴づけるリードボーカルとしての地位を確立しました。

主な活動

ハートのボーカリストとして、「Barracuda」や「Alone」といった数々の世界的なヒット曲を生み出し、ロック界における女性アーティストの地位を確立しました。パワフルでありながら感情豊かな歌声は、多くのリスナーや評論家から高い評価を受けています。

バンド活動と並行して、ソロアーティストとしても精力的に活動しています。ソロ名義では、複数のスタジオ・アルバム、EP、シングルを発表しており、近年では『Hope & Glory』(2017年)、『Immortal』(2018年)、『Fierce Bliss』(2022年)、『Another Door』(2023年)といったアルバムや、『The Ann Wilson Thing!』シリーズのEPなどをリリースしています。

また、他のアーティストとのコラボレーションも多く手掛けており、映画音楽への貢献も特筆されます。例えば、映画『フットルース』の主題歌の一つである「パラダイス～愛のテーマ (Almost Paradise)」ではラヴァーボーイのマイク・レノとデュエットし、映画『テキーラ・サンライズ』の主題歌「サレンダー・トゥ・ミー (Surrender to Me)」ではチープ・トリックのロビン・ザンダーと共演しました。後者は1989年上半期のBillboard Hot 100チャートで最高6位を記録するなど、商業的にも大きな成功を収めています。

発表された代表的なシングルには、初期のThe Daybreaksとの共演作である「Standin' Watchin' You」や「Through Eyes and Glass」(いずれも1969年)から、ランディ・マイズナーとの「ストレンジャーズ」(1982年)、マイク・レノとの「パラダイス～愛のテーマ」(1984年)、ロビン・ザンダーとの「サレンダー・トゥ・ミー」(1988年)といったコラボレーション楽曲、さらには近年発表された「The Revolution Starts Now!」(2020年)、「Tender Heart」(2021年)、「Greed」(2022年)など多岐にわたります。

受賞・評価

長年の音楽活動における顕著な功績が評価され、2023年1月5日には、共にハートを支え続けた妹のナンシー・ウィルソンと共に、米ザ・レコーディング・アカデミーからグラミー賞生涯業績賞（Lifetime Achievement Award）の受賞が発表されました。これは、彼女たちがロック音楽に与えた影響の大きさを証明するものです。

近況

2024年には、自身ががんに罹患していることを公表しましたが、精力的な音楽活動は続けています。

アン・ウィルソンは、その唯一無二の歌声と表現力で、今なお多くのファンを魅了し続けています。ロック界における女性ボーカリストのパイオニアの一人として、そのキャリアと功績は高く評価されています。

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