アヴェンジャー級掃海艦

アヴェンジャー級掃海艦：深海機雷への挑戦

アヴェンジャー級掃海艦は、アメリカ海軍が運用する対機雷戦艦艇です。1970年代、ソ連軍による深深度機雷の開発に対抗するため、従来の掃海艇では対処困難な脅威に対応できるよう、設計・建造されました。ネームシップの建造費は9,970万ドル（約249億円）に上り、その高い技術力と開発コストが伺えます。

背景：深深度機雷の脅威

冷戦時代、ソ連軍はアメリカ海軍の原子力潜水艦に対抗するため、水深2,000メートルまで敷設可能な高度な機雷、例えばアンテナ機雷や短係止上昇式機雷などを開発しました。これらの機雷は従来の掃海艇の能力をはるかに超えており、潜水艦にとって深刻な脅威となっていました。当時、アメリカ海軍はヘリコプターを用いた航空機雷戦に注力していましたが、深深度機雷への対応には不十分でした。ベトナム戦争での掃海作戦の経験も踏まえ、アメリカ海軍はアグレッシブ級などの大型掃海艇の後継として、より強力な外洋型掃海艦の開発を決定。その結果生まれたのが、アヴェンジャー級です。

設計：非磁性船体と高度なシステム

アヴェンジャー級の設計には、いくつかの重要な特徴があります。まず、磁気機雷への触雷を防ぐため、アグレッシブ級と同様に非磁性化された木造船体を採用しています。しかし、深深度掃海のための様々な機器を搭載するため、船体は大型化されています。この大型化に伴う構造上の強度確保のため、長船首楼船型が採用され、船体の強度と安定性を高める工夫が凝らされています。就役後には、安定性向上のため主船体を1.8メートル延長する改修が行われています。

船体の外板は、複数層の板材を特殊な張り方で構成されており、合計厚さは114ミリメートルにも達します。外板と甲板はガラス繊維強化プラスチックで補強され、高い強度と耐久性を誇ります。推進システムはCODAD方式（Combined Diesel and Diesel）を採用し、ディーゼルエンジン4基で2軸のプロペラを駆動します。静音性が求められる掃海作業時には、低速電動機による電気推進に切り替えることができます。また、精密な操艦を可能にするため、全周旋回式のバウスラスターも装備されています。

電源は、ディーゼルエンジン発電機3セットと、出力1,750キロワットのガスタービン発電機を備え、安定した電力供給を確保しています。

装備：統合された対機雷戦システム

アヴェンジャー級の大きな特徴は、C4ISTAR（指揮統制・通信・コンピューター・情報・監視・偵察・標的獲得）システムを中核とした、高度な情報処理システムを備えている点です。初期にはAN/SSN-2(V)精密統合航法システムとAN/SYQ-13航法・指揮統制システムが搭載されていましたが、後にAN/SYQ-15に更新されました。

機雷探知には、AN/SQQ-30またはAN/SQQ-32ソナーが搭載され、可変深度ソナーとハル・ソナーの機能を兼ね備えています。これらのシステムは、NAUTIS-M掃海艇情報処理装置などとも統合されており、効率的な機雷探知・識別を実現しています。

機雷処分システムには、当初はMk.116 mod.0機雷処分システム（MNS）が用いられ、ハネウェル社製のROVであるAN/SLQ-48機雷処分具が中心的な役割を担っていました。このROVは、ケーブル長1,524メートル、運用深度は500メートルと推定され、深深度機雷への対処能力を有していました。近年は、使い捨て式のシーフォックス自走式機雷処分用弾薬(EMD)への更新が進められています。

さらに、アヴェンジャー級は、AN/SLQ-38係維掃海具（オロペサ型）やAN/SLQ-37感応掃海具（磁気・音響機雷対応）なども搭載し、様々なタイプの機雷に対応できる能力を備えています。

結言

アヴェンジャー級掃海艦は、冷戦時代の深深度機雷という脅威に対処するため、高度な技術と巨額の投資によって開発された艦艇です。非磁性化された船体、統合された情報処理システム、そして深深度掃海能力は、現代の対機雷戦においても高い価値を持ち続けています。その設計思想と技術的特徴は、将来の対機雷戦艦艇開発においても重要な参考資料となるでしょう。

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