ア・ビギナーズ・ガイド・トゥ・プロジェクツ - ザ・ディセプション・オブ・ザ・スラッシュ

1999年に「キング・クリムゾン」名義でリリースされたコンピレーション・アルバム、『ア・ビギナーズ・ガイド・トゥ・プロジェクツ - ザ・ディセプション・オブ・ザ・スラッシュ』。この作品は、バンドが1990年代後半に展開した一連の実験的プロジェクト「ProjeKcts」の成果をまとめたものであり、それぞれの活動から選ばれた音源で構成されています。サブタイトルに冠された「ビギナーズ・ガイド・トゥ・プロジェクツ」が示す通り、このアルバムは、キング・クリムゾンの多角的かつ探求的な音楽世界の一端に触れるための入門編として機能する側面を持っています。

「ProjeKcts」は、従来のバンド形態にとらわれず、メンバーを組み替えて小規模な編成で即興演奏を中心とした音楽的試みを行う活動として展開されました。このアルバムには、「プロジェクト1」から「プロジェクト4」までの各期から選ばれた楽曲が収録されており、それぞれのプロジェクトが持っていた独自の音楽性や雰囲気を垣間見ることができます。

収録楽曲とプロジェクトの内訳

アルバムは、まず「プロジェクト3」からの楽曲群で幕を開けます。「マスク (Masque)」と題された一連のトラックが、このプロジェクトの特徴的なサウンドを示唆しています。プロジェクト3からは「Masque 1」から「Masque 7」まで、7つの楽曲が収められています。これに続き、「プロジェクト1」からは、「4 i 1」、「2 ii 3」、「4 ii 4」といった番号が振られた楽曲が収録されており、この時期の演奏の一端を伝えています。

アルバムの中盤から後半にかけては、「プロジェクト2」からの「Sus-tayn-Z」、そして「プロジェクト3」と「プロジェクト4」の両方で演奏された「ザ・ディセプション・オブ・ザ・スラッシュ (The Deception of the Thrush)」が配されています。最後に、「プロジェクト4」からの「ゴースト (Ghost) パート1」と「ゴースト (Ghost) パート2」が収録され、アルバムを締めくくります。このように、異なる時期、異なる編成で行われたプロジェクトの楽曲が集められることで、その多様性が際立つ構成となっています。

参加ミュージシャン

「ProjeKcts」は、キング・クリムゾンの当時のメンバーが流動的に参加して行われました。このアルバムに収録された音源に参加しているのは、以下のミュージシャンたちです。

エイドリアン・ブリュー (Adrian Belew): Vドラムを担当。プロジェクト2に参加しています。
ビル・ブルーフォード (Bill Bruford): ドラム、パーカッションを担当。プロジェクト1に参加しています。
ロバート・フリップ (Robert Fripp): ギターを担当。プロジェクト1、プロジェクト2、プロジェクト3、プロジェクト4の全てに参加しており、この活動の中心人物であったことが伺えます。
トレイ・ガン (Trey Gunn): タッチギター、トーカーを担当。ロバート・フリップと同様に、プロジェクト1、プロジェクト2、プロジェクト3、プロジェクト4の全てに参加しています。
トニー・レヴィン (Tony Levin): ベース、ディジュリドゥ、シンセサイザーを担当。プロジェクト1とプロジェクト4に参加しています。
パット・マステロット (Pat Mastelotto): 電子ドラム、ボタンを担当。プロジェクト3とプロジェクト4に参加しています。

このように、各プロジェクトのメンバー構成は異なっており、それがそれぞれのサウンドの違いに大きく影響を与えています。ビル・ブルーフォードとトニー・レヴィンが参加したプロジェクト1、エイドリアン・ブリューが加わったプロジェクト2、そしてパット・マステロットがリズムを担うプロジェクト3や4など、編成の変化そのものが音楽性の探求に繋がっていたと言えるでしょう。このアルバムは、その実験的な試みの断片を俯瞰できる貴重な記録となっています。

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