アーカムハウス

アーカムハウスは、アメリカ合衆国ウィスコンシン州ソークシティを拠点とする出版社です。1939年の設立以来、世界幻想文学に大きな影響を与え続けてきました。

その歴史は、作家であるオーガスト・W・ダーレスとドナルド・ワンドレイの2人によって始まりました。2人は、1937年に亡くなった作家、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの作品を世に広めたいという強い思いを抱いていました。ラヴクラフトの創作物に頻繁に登場する架空都市「アーカム」から社名を取ったアーカムハウスは、ラヴクラフト作品出版を主な目的として設立されました。

最初の出版物は、1939年に刊行されたラヴクラフトの作品集『アウトサイダーその他』でした。この出版を皮切りに、アーカムハウスはラヴクラフトの作品だけでなく、様々な作家の作品を世に送り出し始めます。特に、レイ・ブラッドベリやラムジー・キャンベルといった、後に著名な作家となる人々を世に送り出したことは、アーカムハウスの歴史において重要な出来事と言えるでしょう。彼らはアーカムハウスからデビューし、それぞれの分野で大きな成功を収めました。

1971年には、オーガスト・W・ダーレスが亡くなります。その後、ドナルド・ワンドレイが編集長を務めることになりますが、短期間でその職を離れました。1970年代から1980年代にかけては、ジェームズ・ターナーが編集長となり、アーカムハウスは新たな作家を発掘し、出版物のジャンルも拡大するなど、活発な活動を展開しました。著名な作家を積極的に起用し、新たな読者層の開拓にも成功しました。

1994年には、エイプリル・ダーレスが筆頭株主となりました。そして、1996年にジェームズ・ターナーが退職すると、ピーター・ルーパーが編集長に就任します。しかし、病気のため、ピーター・ルーパーは編集長としての活動が思うようにいかなくなり、アーカムハウスの活動は低調となりました。ターナー退任後は、作品の出版よりも、史料の出版が中心となり、新たな作品が発表される機会は減少していきました。

このような活動の中、アーカムハウスは世界幻想文学への貢献を高く評価され、2005年にはウィスコンシン州マディソンで開催された世界ファンタジー大会において、長年の功績に対して特別表彰を受けました。これは、アーカムハウスが長年にわたって積み重ねてきた努力と実績が認められた証と言えるでしょう。

2011年には、エイプリル・ダーレスが亡くなり、会社は彼女の子であるダニエル・ダーレスとデイモン・ダーレスに引き継がれました。現在もアーカムハウスは活動を続けていますが、かつてのような活発な作品出版は行われておらず、主に史料の出版が中心となっています。しかし、その歴史と功績は、世界幻想文学の歴史に大きな足跡を残しています。アーカムハウスは、これからも世界幻想文学の重要な存在として記憶され続けることでしょう。

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