アーカム

アーカム：クトゥルフ神話の暗黒都市

アーカムは、ホラー小説の巨匠H・P・ラヴクラフトの作品群に繰り返し登場する架空の都市であり、クトゥルフ神話の中核をなす舞台として知られています。マサチューセッツ州に位置するアーカムは、古風な建築様式と、数々の怪奇事件で彩られた歴史を持つ、独特の雰囲気を醸し出す街です。

アーカムの誕生とモデル

アーカムという地名は、1920年に執筆されたラヴクラフトの短編小説『家のなかの絵』で初めて登場しました。しかし、物語の舞台として本格的に描かれたのは、『死体蘇生者ハーバート・ウェスト』からです。ラヴクラフトは、マサチューセッツ州セイラムとロードアイランド州プロヴィデンスをモデルにアーカムを創造しました。特にセイラムは、1692年のセイラム魔女裁判で知られており、アーカムの歴史にも魔女狩りにまつわる暗い影が落とされています。また、プロヴィデンスはラヴクラフトの故郷であり、彼の個人的な経験もアーカムの描写に反映されていると考えられます。

アーカムの街並みと歴史

アーカムの街並みは、築数百年を数える古い家々が立ち並び、駒形切妻屋根やジョージア風の欄干といった特徴的な建築様式が見られます。これらの建物の中には、歴史の闇を秘めた隠し部屋が存在すると言われています。

アーカムの歴史は1692年に始まります。セイラムから魔術師たちが移り住み、街の基礎が築かれました。その後、1765年には名門大学であるミスカトニック大学が創立され、医学部、地質学部、考古学部といった研究機関が設立されました。ミスカトニック大学の付属図書館には、禁書『ネクロノミコン』をはじめとした数々の貴重な書物が収蔵されています。

19世紀に入るとアーカムは産業都市へと変貌を遂げましたが、その一方で、隕石落下や洪水、腸チフス流行といった災厄にも見舞われました。20世紀に入ると、アーカムではダニッチの怪事件や、ランドルフ・カーターの失踪といった、怪奇現象が相次いで発生します。これらの事件は、アーカムの暗い歴史を象徴する出来事となっています。

アーカムの周辺地域

アーカムの周辺には、インスマス、ダニッチ、キングスポートといった、それぞれに特徴的な都市や村落が存在します。インスマスはアーカムの北に位置し、ダニッチはミスカトニック川の上流、キングスポートは河口にあります。これらの地域も、ラヴクラフトの作品に繰り返し登場し、アーカムと深く関わる怪奇現象の舞台となっています。

アーカムを象徴する場所

アーカムには、数々の象徴的な場所が存在します。

ミスカトニック大学: アーカムの中心的な存在であり、クトゥルフ神話研究の中心地でもあります。
アーカム・アサイラム: 精神病院であり、多くの怪奇現象と関わりのある場所です。ダンバース州立病院がモデルと言われています。
* 絞首刑人の丘: セイラムのギャロウズ・ヒルになぞらえられた場所であり、魔女狩りの歴史を物語っています。

アーカムハウス

ラヴクラフトの死後、彼の作品を出版するために設立されたアーカムハウスは、この架空都市アーカムの名を冠しています。アーカムハウスはクトゥルフ神話関連の作品を数多く世に送り出し、クトゥルフ神話を広める上で重要な役割を果たしました。

アーカムとクトゥルフ神話

アーカムは、クトゥルフ神話において重要な役割を果たす、中心的な舞台です。多くのクトゥルフ神話作品で描かれる怪奇現象の多くは、この街を舞台に展開されます。アーカムは、単なる舞台というだけでなく、クトゥルフ神話の重要な象徴として、多くの読者に恐怖と畏敬の念を抱かせ続けています。その独特の雰囲気と、数々の怪奇事件は、現代においても多くの作家やクリエイターにインスピレーションを与え続けています。

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