アーキグラム

アーキグラムは、1961年に結成され、1970年代初頭にかけて活動したイギリスの前衛建築家集団であり、彼らが発行した同名の雑誌の名前でもあります。メンバーは、ピーター・クック、ロン・ヘロン、デヴィッド・グリーン、デニス・クロプトン、ウォーレン・チョーク、マイケル・ウェブなどで構成されていました。

彼らは、昼間はそれぞれの建築設計事務所や建設会社で実務的な仕事に従事していましたが、夜になると、既存の建築に対する疑問を持つ人々が集まり、建築の可能性を模索する活動を始めました。彼らの特徴は、実際に建設される建築物をほとんど作らず、建築ドローイングを「建築作品」として捉えた点にあります。彼らは、建築を情報として捉え、マス・メディアを通じて消費されることを目指しました。

アーキグラムの代表的な作品としては、1964年に発表された「ウォーキング・シティ」や「プラグイン・シティ」が挙げられます。「ウォーキング・シティ」は、巨大な足を持つ移動都市であり、「プラグイン・シティ」は、着脱可能な空間ユニットを組み合わせて構成された都市です。これらの作品は、テクノロジーの進歩に対する期待と同時に、その潜在的な危険性をアイロニカルに表現しています。

彼らのドローイングは、ポップカルチャーや消費社会を背景にした未来の建築・都市像を描いており、1970年代の建築潮流に大きな影響を与えました。アーキグラムは、建築の概念を情報伝達のプロセスに組み込み、具体的な建築物の建設よりも、アイデアの伝達を重視しました。

メンバーの中でも、特にピーター・クックは中心的な存在でした。彼はサウスエンド・オン・シー出身で、AAスクールでロン・ヘロンやウォーレン・チョークと出会い、アーキグラムを結成しました。彼らが発行した雑誌『アーキグラム』は、1961年に創刊され、1970年の9号で終刊しました。

アーキグラムは、1970年代初頭にグループとしての活動を終えましたが、そもそも流動的なグループであり、明確な始まりや終わりを示すことは難しいとされています。しかし、彼らの活動期間は、1969年のモンテカルロ開発コンペティションに当選し、実務設計を行った1974年までとされています。

彼らの活動は、後年になって再評価され、2002年にはRIBAゴールドメダルを受賞しました。1994年にはウィーンを皮切りに世界各国で回顧展が開催され、日本では2005年に水戸芸術館で展覧会が行われました。

アーキグラムは、その革新的なアイデアとドローイングによって、建築の概念を大きく変えた存在として、現代の建築家たちにも大きな影響を与え続けています。彼らの作品は、建築が単なる物理的な構造物ではなく、情報や概念を伝える媒体としての可能性を持っていることを示しています。

参考文献として、今永和利氏による「現代から見るアーキグラム 回顧展によせて」（『新建築』、新建築社、2005年3月号）が挙げられます。

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