アークネット

アークネット(ARCNET)の概要

アークネット(ARCNET: Attached Resource Computer NETwork)は、リアルタイム性の高いデータ伝送を必要とするシステムに適した、ローカルエリアネットワーク(LAN)のプロトコルです。1977年、アメリカのデータポイント社によって開発され、ANSI/ATA 878.1規格として標準化されました。

ARCNETは、改良型トークンパッシング方式というデータ伝送方法を採用しています。この方式では、ネットワーク上のノードが順番にデータを送信するための許可証である「トークン」を回し合い、トークンを持っているノードだけがデータを送信できます。これにより、データの衝突を防ぎ、安定した通信を実現しています。

ARCNETの特徴として、以下の点が挙げられます。

リアルタイム性: トークンパッシング方式と、固定長のデータパケットを使用することで、データ伝送時間を予測しやすく、リアルタイム性の高い通信を実現しています。
ノード数の柔軟性: 最大255個のノードを接続できます。
ネットワーク構成の柔軟性: バス型、スター型、ツリー型など、様々なネットワークトポロジーに対応できます。
シンプルな構成: 通信速度は、156.25Kbpsから10Mbpsまで様々です。データパケットは、512バイトまたは256バイトの固定長です。ノード数が決まっている場合、通信にかかる時間を正確に予測できます。
ワンチップICによる容易な実装: エラー処理や自動復帰機能などを備えたワンチップICが市販されており、機器への組み込みが容易です。

ARCNETのアーキテクチャ

ARCNETは、OSI参照モデルの物理層とデータリンク層の一部を規定しています。物理層は、ネットワークケーブルの種類や接続方法などを規定し、データリンク層は、データの送受信手順やエラー制御などを規定します。

ARCNETで使用されるデータパケットは、固定長のヘッダーとデータ部から構成されています。ヘッダーには、送信元ノードアドレス、宛先ノードアドレス、パケットの種類などの情報が含まれています。データ部は、送信するデータそのものです。

ARCNETの用途

ARCNETは、リアルタイム性を要求されるアプリケーションに適しているため、以下のような用途で広く利用されてきました。

産業用制御システム: 工場設備の制御など、リアルタイム性が重要なシステム。
計測システム: センサーデータの収集と監視など、リアルタイムなデータ処理を必要とするシステム。
POSシステム: リアルタイムな取引処理が必要なPOSレジシステム。
印刷システム: 複数のプリンタを制御するシステムなど。

これらのシステムでは、ARCNETのリアルタイム性と信頼性が評価され、数多くのシステムに採用されてきました。

ARCNETの利点と欠点

利点:

リアルタイム性が高い
ネットワーク構成が柔軟
ワンチップICによる容易な実装
安定した通信

欠点:

通信速度が比較的遅い（現在の高速ネットワークと比較すると）
接続可能なノード数に制限がある
近年では、より高速で高機能なネットワーク技術が主流となりつつあるため、新規導入は減少傾向にある。

まとめ

アークネットは、リアルタイム性が求められる組み込みシステムにおいて、長年にわたって信頼性の高いネットワークプロトコルとして利用されてきました。現在では、より高速なEthernetなどのネットワーク技術が主流となっていますが、そのシンプルさと信頼性から、既存システムではなお活用されているケースも多いと言えます。 今後、新規導入されるケースは少ないかもしれませんが、歴史的なネットワーク技術として、その技術的意義は依然として重要です。

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