OSI参照モデル

OSI参照モデル：コンピュータネットワークの階層構造

OSI参照モデル(Open Systems Interconnection reference model)は、[コンピュータネットワーク]]における複雑なデータ通信プロセスを7つの階層に分割することで、それぞれの役割を明確に理解しやすくするためのモデルです。[[国際標準化機構]によって策定され、ネットワークの基礎知識として広く知られています。EthernetやTCP/IPといった、現在広く利用されているプロトコルとは直接的な適合性がないものの、ネットワークの仕組みを理解するための重要な概念として、現在もその有用性を保っています。

OSI参照モデルの歴史と現状

1970年代後半から1980年代にかけて、様々なメーカーが独自のプロトコルを開発し、ネットワーク機器の相互接続に課題が生じていました。この状況を打破するため、ISOは1977年にOSI参照モデルの標準化に着手しました。しかし、OSI自体が広く普及することはなく、参照モデルのみがネットワーク技術の基礎として定着することになりました。

OSI参照モデルは、異なる機器間の通信を可能にするための設計指針として、その価値を保ち続けています。一方で、上層3層(アプリケーション層、プレゼンテーション層、セッション層)は、実際にはアプリケーション層に統合されることも多く、不要論も存在します。それでも、プロトコル開発における仕様と実装の分離という点では、OSI参照モデルは有効な指針となっています。

7つの階層：それぞれの役割

OSI参照モデルは、以下の7つの階層(レイヤ)で構成されています。各層は、特定の機能を担当し、下位層のサービスを利用して上位層にサービスを提供します。

1. 物理層: 物理的な接続方法を定義します。ケーブルの種類、コネクタの形状、信号の電圧など、物理的なハードウェアに関する仕様を規定します。
2. データリンク層: 隣接する機器間のデータの送受信を制御します。エラー検出や、信頼性の高いデータ転送を実現するための仕組みを提供します。[イーサネット]のプロトコルはこの層に属します。
3. ネットワーク層: 複数のネットワークにまたがるデータのルーティングを行います。IPアドレスを用いた経路制御や、データパケットの転送などがこの層で行われます。IPプロトコルはこの層に属します。
4. トランスポート層: 通信の信頼性と効率性を確保します。データの分割、順序制御、エラー訂正、フロー制御などが行われます。TCPやUDPプロトコルはこの層に属します。
5. セッション層: 通信セッションの開始、終了、管理を行います。複数のアプリケーション間の通信を管理し、接続の維持や切断を制御します。
6. プレゼンテーション層: データの表現形式を変換します。例えば、異なる文字コード間での変換や、データの暗号化・復号化などが行われます。
7. アプリケーション層: 具体的なアプリケーションサービスを提供します。HTTP、FTP、SMTPなどのプロトコルはこの層に属し、Webブラウジング、ファイル転送、メール送信などの機能を提供します。

OSI参照モデルと他のモデル

OSI参照モデルは、TCP/IPモデルなど他のネットワークモデルと比較されることがあります。TCP/IPモデルは、OSI参照モデルよりもシンプルで、実際に広く利用されているプロトコルに基づいています。OSI参照モデルは、理想的なモデルとして設計されていますが、TCP/IPモデルは現実的な実装に基づいたモデルです。どちらのモデルにも利点と欠点があり、ネットワークの理解には、両方のモデルを理解することが重要です。

OSI参照モデルの比喩

OSI参照モデルの7階層を、分かりやすく説明するために様々な比喩が用いられます。例えば、タコスの7層構造に例えたり、階層の上にさらに「ユーザ層」「財務層」「政治層」「宗教層」といったユーモラスな層を加えるジョークもあります。「第8層問題」といった表現は、ネットワーク技術的な問題ではなく、ユーザ側の問題を指す隠語として用いられます。

まとめ

OSI参照モデルは、コンピュータネットワークの基礎を理解するための重要な概念です。各層の機能を理解することで、ネットワーク全体を俯瞰的に捉えることができ、より高度なネットワーク技術の学習に繋がります。一見複雑に見えるOSI参照モデルですが、その構造を理解することは、ネットワークエンジニアを目指す方にとって不可欠なステップとなります。様々な比喩を用いて学ぶことで、より理解が深まるでしょう。

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