アーセナル (ウクライナの企業)

アーセナル：ウクライナを代表する光学・電子機器メーカー

アーセナルは、ウクライナの首都キーウに拠点を置く、光学・電子機器の主要企業です。正式名称は、国営工場«アルセナール»といい、兵器開発からカメラ製造まで幅広い分野でその名を馳せてきました。特にカメラにおいては、ソ連時代から続く歴史を持ち、その技術力は世界的に評価されています。

兵器開発の歴史

アーセナルの歴史は、1764年にロシア帝国時代の兵器廠「アルセナーリヌィイェ・マスチェルスキーイェ」として創設されたことに始まります。当初は、火砲や装甲車などの兵器を製造し、第一次世界大戦ではロシア帝国軍に兵器を供給しました。中でも「オースチン・プチーロヴェツ装甲車」は、その代表的な製品として知られています。これらの兵器は、ロシア革命やその後の内戦、ウクライナ内戦など、数々の戦場で使用されました。

1918年1月には、ボリシェヴィキの煽動を受けた従業員らが一月蜂起を起こし、ウクライナ中央ラーダ政府を脅かしました。この蜂起は、キエフ市街戦での赤軍の勝利を決定づける要因となりました。

その後、アーセナルは光学距離計、軍事用赤外線探査機器、空対空ミサイル、機体角測定機器など、光学兵器の開発にも力を注ぎました。ソ連末期に開発されたR-73空対空ミサイルの誘導用HMDシステムは、MiG-29やSu-27などの戦闘機に搭載され、宇宙ステーションミールや宇宙船ブランにも、アーセナルの機器が採用されました。

カメラ製造の歴史

アーセナルは、兵器開発と並行して、1917年から民生品の開発も開始しました。第二次世界大戦後、1946年に「ARSENAL V.I.LENINE」として再組織され、旧ドイツの「Contax」の技術を継承したカメラの製造を開始しました。1947年からは、「Contax」や「Kiev」ブランドで、Contax IIと類似したカメラを製造し、1987年まで生産が続けられました。これらのカメラは、ツァイス・イコンの工場プラントを移籍し、ドイツの工作機械や部品加工機械をそのまま使用して製造されました。レンズは、S・A・ズヴェーレフ記念クラスノゴールスク工場との協力で製造されました。

1957年には、スウェーデンのハッセルブラッド1000Fの後継機として、「Salut」を製造販売し、その後、「Kiev 88TTL」「Kiev CM」といった中判カメラを開発しました。これらのカメラは、ハッセルブラッド1000Fのコンセプトを受け継ぎながらも、独自の発展を遂げ、現在も同社の看板商品となっています。

1970年には、東ドイツのペンタコン人民公社の主力製品「Pentacon Six」と同一マウントの「Kiev-6C」を開発し、改良を重ねて現在の「Kiev-60TTL」へと進化しました。

アーセナルのカメラは、中判カメラ・レンズが主力であり、「Kiev-60TTL」「Kiev-80CM」などの6x6判カメラを中心に製造しています。カメラマウントは、ペンタコンシックスと同じスピゴッドマウントを採用しており、互換性を確保しています。ただし、「Kiev 88TTL」の古いバージョンは、ハッセルブラッド1000Fと同様のスクリューマウントを使用しています。

交換レンズとしては、「PCS ARSAT H 2,8/35」「Mir 67 Н」「ZOOM ARSAT H,M 4,5/80-200」「МС Granit-11 Н,М」「ARSAT C,B 3,5/30」「ARSAT C, B 3,5/250」「ARSAT С,В 3,5/45」「Mir 26 С,В」「PCS ARSAT 4.5/55 Lens」などが提供されており、中判カメラ用に多くの優れた交換レンズを供給しています。

アマチュア向けには、「KIEV-19M (35mm)」「KIEV-35A (35mmコンパクトカメラ)」などの小型カメラも製造販売しています。

また、アーセナルは発光ダイオードなどの電子デバイスの製造も行っており、これらの技術はカメラ部品にも応用されています。

近年のアーセナル

国営企業として発展を遂げたアーセナルは、電子応用機械器具、測定機械器具、電子デバイスなどの分野でも最先端に位置しています。2004年には、民生用電気機器部門でも賞を受賞しており、総合的な電子・電磁応用機器メーカーとしての地位を確立しています。

現在の代表はイーホル・ヴィークトロヴィチ・ヴォロシュチューク、技師長はムィコーラ・フェドスィーヨヴィチ・コチェルハーが務めています。

まとめ

アーセナルは、兵器開発からカメラ製造まで、幅広い分野でウクライナの技術力を支えてきた企業です。ソ連時代から続く歴史を持ち、特にカメラにおいては、旧ドイツの技術を継承し、独自の発展を遂げてきました。現在では、中判カメラや交換レンズの製造に注力しており、世界中のカメラ愛好家から支持を集めています。

参考資料

「キエフ88マニュアル」八木橋正雄 1996年刊

外部リンク

КАЗЕННЕ ПІДПРИЄМСТВО СПЕЦІАЛЬНОГО ПРИЛАДОБУДУВАННЯ "АРСЕНАЛ"（英語、ロシア語、ウクライナ語）

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