アーデルベルト・フォン・シャミッソー

アーデルベルト・フォン・シャミッソー（1781年 - 1838年）は、フランスに生まれ、ドイツで活躍した詩人であり、博物学者です。ロマン派文学の旗手として知られ、リベラルな思想を反映した作品を残しました。

生涯

フランスの貴族の家に生まれたシャミッソーは、フランス革命の影響で家族と共にドイツへ亡命。ベルリンで生活を始め、プロイセン軍に入隊しました。しかし、文学への志を捨てきれず、詩作に励み、1803年には詩集『ドイツ年鑑詩集』を創刊し、新進詩人として注目を集めます。

ナポレオン戦争への従軍、フランスへの帰国、スタール夫人の亡命生活への同行などを経て、シャミッソーは植物学の研究に没頭。スイスでの滞在中に、植物学者としての知識を深めました。1812年にベルリンに戻り、研究を続けながら、1814年には物語『影をなくした男』を発表。この作品は、ナポレオン戦争における自身の苦悩を反映したもので、今日でも広く読まれています。

1815年、シャミッソーはロシアの探検船「リューリク」に植物学者として乗船し、世界一周の旅に出ます。この航海中にサルパ（原索動物）の世代交代を世界で初めて発見。また、同船に乗り合わせた博物学者ヨハン・エッシュショルツと親交を深め、後にハナビシソウを新種記載する際、彼の名を取り学名を Eschscholzia californica と命名しました。

1818年に帰国後、ベルリン植物園の園長、科学アカデミー会員に就任。植物学者としての活動に専念し、ハナビシソウをはじめとする多くの新種に命名者として名を残しました。48歳で文学活動を再開し、『ドイツ年鑑詩集』を復刊。晩年は詩人として再び活躍し、結婚生活を題材とした詩「女の愛と生涯」は、シューマンやレーヴェによって歌曲集として作曲され、広く親しまれています。

主要作品

影をなくした男（ペーター・シュレミールの不思議な物語）: 自らの影を悪魔に売り渡してしまった男の物語。自己喪失とアイデンティティの危機を描いた作品として、今日でも多くの読者を魅了しています。
女の愛と生涯: 結婚、出産、夫の死といった女性の一生を歌った連作歌曲。シューマンやレーヴェによって作曲され、歌曲集として広く知られています。
ボンクール城: 故郷への郷愁を歌った詩。
サラスとゴメス: 南米の島を題材にした詩。

植物学者としての功績

シャミッソーは、植物学者としても多くの功績を残しました。世界一周の航海で得た知識をもとに、多くの植物を新種として記載。彼の名は、植物学の分野にも深く刻まれています。ダケカンバ、イワギキョウ、ハナビシソウなどの植物に、彼の名が残っています。

シャミッソー賞

ドイツ語圏の優れた文学作品に贈られるシャミッソー賞は、彼の名にちなんで名付けられました。この賞は、シャミッソーの文学への貢献を称え、後世の作家たちを激励するために創設されました。

アーデルベルト・フォン・シャミッソーは、詩人、植物学者、探検家として、多岐にわたる分野で才能を発揮し、後世に大きな影響を与えました。彼の作品は、今もなお多くの人々に読まれ、愛され続けています。

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