ダケカンバ

ダケカンバ（岳樺）

ダケカンバ（学名: Betula ermanii）は、カバノキ科カバノキ属に属する落葉広葉樹です。和名である「ダケカンバ」は、シラカンバよりも標高の高い場所に生育することに由来し、漢字では「岳樺」と表記されます。中国でも同様に「岳樺」と呼ばれています。

名称と別名

ダケカンバには多くの別名があり、その一つに「ソウシカンバ」があります。これは、剥がした樹皮に文字を書くことができたため、草紙に例えられたことによります。また、山岳地帯で樹形が曲がりくねっているものを「踊り樺」と呼ぶこともあります。その他、エゾノダケカンバ、オオダケカンバ、コバノダケカンバ、キレハダケカンバ、マルミノダケカンバなど、同種内の変種や地域による呼び分けも存在します。

分布と生育地

ダケカンバは、日本、千島列島、サハリン、朝鮮半島、中国東北部、内蒙古、ロシア沿海州、カムチャツカといった広範囲に分布しています。日本では、北海道、本州（中部地方以北）、四国の一部（愛媛県、高知県、徳島県）の亜高山帯に生育します。特に北海道東部太平洋岸では、夏でも低温で霧が発生する環境下でダケカンバ林が発達します。高山や寒冷な山地に多く見られ、シラカンバよりもさらに高い場所に分布するのが特徴です。針葉樹林に混ざって生育することも多いですが、亜高山帯の上部や森林限界付近では、純林に近いダケカンバ林を形成することもあります。また、森林限界を超えた場所でも、ハイマツの中に混生していることがあります。

形態と生態

ダケカンバは、樹高10〜30mになる高木です。しかし、森林限界付近では低木状になり、横に這うように生えることもあります。積雪や強風の影響で、ねじ曲がった樹形になることが多いです。樹皮は灰褐色から淡褐色で、表面は白っぽく見えますが、薄く剥がれると褐色が濃くなります。若い木の樹皮は紫褐色をしています。若い枝は栗褐色で、皮目と腺点があり、短枝が出ます。老木になると樹皮は縦に裂けます。

葉は長さ5〜10cmの三角状卵形から広卵形で、葉脈は7〜12対とシラカンバよりも多いです。秋には美しい黄色に紅葉し、落葉はすぐに褐色に変わります。

花期は5〜6月で、雌雄同株です。雄花序は黄褐色で、長さ5〜7cmの尾状に垂れ下がります。雌花序は緑色の短円柱形で、長さ2〜3.5cmで直立します。果実は9〜10月頃に実り、果穂は上向きにつき、翌年まで残ります。種子には翼があり、風によって散布されます。

冬芽は、枝や短枝の先端や側面に互生し、雄花序を除いて芽鱗に包まれています。雄花序は裸芽で、枝先に2〜3個つきます。冬芽の脇にある葉痕は三角形で、維管束痕は3つあります。

ダケカンバはシラカンバとよく似ていますが、樹皮の色がより赤茶色がかっている点、葉に光沢がある点（シラカンバの葉には光沢がない）、果穂が上向きにつく点などで区別できます。明るい場所を好み、成長が早いこと、森林が破壊された後に最初に生える木であることなどは、シラカンバと共通しています。種子の翼はシラカンバよりも小さいですが、耐陰性はシラカンバよりも強いため、針葉樹林内でも生育することができます。また、一度根付いた場所では萌芽更新を行い、生存競争を有利に進めています。

利用

ダケカンバの樹皮は燃えやすく、天然の着火剤として利用されています。また、北海道では道産木材として注目されており、特にバットの材料としての活用が期待されています。

変種

ダケカンバには以下のような変種があります。

アツハダカンバ（別名：アツカワダケカンバ、学名: Betula ermanii Cham. f. corticosa (Nakai) Sugim.）
チャボダケカンバ（別名：サイトウカンバ、学名: Betula ermanii Cham. var. saitoana (Nakai) Hatus.）

ギャラリー

[画像1]
[画像2]
[画像3]
[画像4]
[画像5]

参考文献

鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社、2014年
田中潔『知っておきたい100の木：日本の暮らしを支える樹木たち』主婦の友社、2011年
辻井達一『日本の樹木』中央公論社、1995年
西田尚道監修 志村隆・平野勝男編『日本の樹木』学習研究社、2009年
長谷川哲雄『森のさんぽ図鑑』築地書館、2014年
林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年
* 平野隆久監修『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年

もう一度検索