アーニー・ボール

アーニー・ボール（Ernie Ball、1930年8月30日 - 2004年9月9日）は、アメリカ合衆国の実業家であり、ミュージシャンです。彼は、ギター関連製品における革新的な開発で広く知られ、音楽業界に大きな影響を与えました。その生涯は、音楽への情熱とビジネスへの鋭い洞察力によって彩られています。

生い立ちと音楽への目覚め

アーニー・ボールは、カリフォルニア州サンタモニカでシャーウッド・ローランド・ボール（Sherwood Roland Ball）として生まれました。音楽一家に育ち、祖父は有名なスタンダードナンバー「アイルランド人のほほ笑みは」の作者であり、父はハワイアン・スティール・ギターの教師でした。9歳の時、父親を喜ばせようとスティール・ギターを始めたものの、すぐに飽きてしまいました。しかし、10代になると再び楽器に興味を持ち、毎日3時間以上の猛練習を重ねました。その結果、わずか1年足らずでミュージシャンズ・ユニオンの一員となるほどの腕前を身につけました。

ミュージシャンとしてのキャリア

10代の頃からプロの演奏活動を開始し、南ロサンゼルスのビアバーで腕を磨きました。19歳でペダル・スティールギターバンド「トミー・ダンカン・バンド」に加入し、アメリカ南部をツアーしました。朝鮮戦争中は空軍バンドでギターとドラムを担当し、軍役後にはロサンゼルスに戻り、酒場やラウンジでの演奏を続けました。1950年代にはテレビ番組『ウェスタン・バラエティ』に出演し、その名がロサンゼルスの音楽シーンに広まり、スタジオミュージシャンや講師としての仕事も得るようになりました。

企業家としての才能

1957年または1958年、アーニー・ボールはカリフォルニア州タルザナに、アメリカ初のギター専門店を開店しました。「ギターを売りたいだけだ」という彼の言葉は、当時としては非常に革新的でした。当初、ギター専門店は成功しないと言われていましたが、彼の店には遠方からも多くの人々が訪れるようになり、彼のビジネスは国際的な規模へと発展しました。最終的に、彼の会社が生み出した製品は世界70カ国以上、55万軒以上の店舗で販売されるようになりました。

「スリンキー」の開発

1960年代のロックンロールリバイバルの中、アーニー・ボールは初心者がフェンダーの「#100ミディアムゲージ弦」の3弦（0.029インチ）を押さえるのが難しいことに気づきました。フェンダーにこの問題を指摘し、より軽いゲージを提案しましたが、拒否されました。そこで、彼は弦メーカーに3弦が0.024インチの特製セットを作らせ、自身の店で販売しました。これがアーニー・ボールブランドの始まりです。彼の店は、ザ・ビーチ・ボーイズやマール・トラヴィスなどのプロミュージシャンにも利用されるようになりました。また、ギタリストのノーキー・エドワーズが、太い弦に苦労し、1弦の代わりにバンジョーの弦を使用していたことを知ると、彼のためにライトゲージ弦を開発しました。この弦は後に「スリンキー」という名前で販売され、世界中のギタリストに愛用されるようになりました。スリンキーは、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、スラッシュなど、多くの著名なミュージシャンに支持されています。

革新的なビジネス戦略

アーニー・ボールは、既存の製品を改良し、市場のニーズに応えることに重点を置いていました。彼は、市場調査を軽視し、製品を市場に出してから成功を試すという、型破りな経営方針を持っていました。彼は、損益を必要悪と捉え、自身の直感を信じてビジネスを拡大しました。1980年代には、レオ・フェンダーとトム・ウォーカーを擁するミュージックマン社を買収し、ギター、ベース、アンプの製造にも乗り出しました。

ミュージックマンとの関わり

1984年、アーニー・ボールはレオ・フェンダーが設立した楽器メーカー、ミュージックマンを買収しました。この買収により、彼は高品質な楽器製造にも参入し、さらなる事業拡大を果たしました。

多趣味な一面と家族

アーニー・ボールは、カー・コレクション、サーフィン、飛行機操縦など、多趣味な人物でした。また、著書やギター教則本の執筆も行いました。彼は結婚し、3人の息子（シャーウッド、デイヴィッド、スターリング）と娘のノヴァをもうけました。

死と遺産

アーニー・ボールは、42年間会社に留まり、2004年9月9日に進行中の病気のため亡くなりました。彼の死後、会社は息子たちと家族に引き継がれました。彼は、カリフォルニア州サンルイスオビスポの自宅近くに埋葬されました。

アーニー・ボールは、音楽業界に革新をもたらした先駆者であり、その遺産は今日まで生き続けています。

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