アーネスト・ウィリアム・ブラウン

アーネスト・ウィリアム・ブラウン：月の運動の解明者

アーネスト・ウィリアム・ブラウン (1866年-1938年) は、イギリスで生まれ、主にアメリカで活躍した数学者、天文学者です。彼の名を不朽のものにしたのは、何と言っても月の運動に関する卓越した研究です。ブラウンは、並外れた計算能力と粘り強い探究心で、それまでになく正確な月の運行表を作成することに成功しました。この功績は、後の天文学の発展に計り知れない影響を与えました。

生涯：研究一筋の学者

ヨークシャー州ハルに生まれたブラウンは、ケンブリッジ大学のクライスト・カレッジで学びました。指導教官であったジョージ・ハワード・ダーウィンのもとで研鑽を積み、特にジョージ・ウィリアム・ヒルの月の運動に関する論文に強い影響を受けました。卒業後、1893年にはアメリカのハバフォード大学で数学教授の職に就きます。

ハバフォード大学では、ブラウンは月の理論に関する研究に没頭しました。1896年には、ヒルのほか、ドロネーやハンセンといった先人たちの研究成果をまとめた著書『An Introductory Treatise on the Lunar Theory』を刊行。さらに独自の研究を深め、新たな月の運動理論を構築。その成果は、1897年から1908年にかけて王立天文学会誌に発表され、高く評価されました。

1907年、ブラウンはイェール大学教授に就任。彼は、月の運動を精密に計算する大規模なプロジェクトを立ち上げました。12年もの歳月と多額の費用を投じたこのプロジェクトは、1919年に『Tables of the Motion of the Moon』（月の運動表）という形で結実しました。この運行表は、コンピュータによる近代的な計算手法が開発される1984年まで、世界中の天文学者によって広く利用されました。

イェール大学では月の運動の研究を続けながら、惑星の運動に関する研究にも取り組みました。クラレンス・シュックとの共著『Planetary Theory』も残しています。1932年に退官するまで、研究生活に没頭したブラウンは、天文学の歴史に燦然と輝く足跡を残しました。

受賞歴：数々の栄誉

ブラウンの業績は、数々の賞によって認められました。

王立天文学会ゴールドメダル (1907年)
アダムズ賞 (1907年)
ロイヤル・メダル（1914年）
ブルース・メダル（1920年）
* ジェームズ・クレイグ・ワトソン・メダル（1936年）

これらの賞は、彼の天文学への貢献がいかに大きかったかを物語っています。

ブラウンと後世

ブラウンの研究は、天体力学における計算手法に大きな進歩をもたらし、現代の天文学の基礎を築く上で重要な役割を果たしました。彼の作成した月の運行表は、長年にわたり天文学者の必須ツールとして活用され、その正確性と実用性は高く評価されました。さらに、彼の研究は、後の小惑星の軌道計算などにも応用され、天文学の様々な分野に影響を与えました。

今日、彼の名は小惑星の名前にも残されており、その功績は今もなお人々に記憶されています。アーネスト・ウィリアム・ブラウンは、まさに近代天文学史における重要な人物と言えるでしょう。

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