アーミル・カーン

アーミル・カーン（Aamir Khan）は、1965年3月14日生まれのインドを代表する映画俳優であり、プロデューサーとしても多大な影響力を持つ人物です。ムンバイのシーア派イスラム教徒の家庭に生まれ、父や叔父も映画界に深く関わっていたことから、幼い頃から映画の世界に親しみました。

1973年に子役としてスクリーンに登場した後、1984年の『ホーリー祭』で大人の俳優として本格的にデビュー。1988年の主演作『破滅から破滅へ』で一躍注目を集め、主要な俳優としての地位を確立しました。

俳優業だけでなく、1999年には自身の映画会社「アーミル・カーン・プロダクション」を設立。その第一作である『ラガーン』では製作と主演を兼任し、インド映画としては異例のアカデミー賞外国語映画賞ノミネートという快挙を成し遂げました。その後も『黄色に塗れ』が同賞にインド代表として出品されるなど、彼の関わる作品は国際的な評価を得ています。

2007年には識字障害を持つ少年を描いた『地上の星たち』で初めて監督に挑戦し、その手腕が高く評価されました。

アーミル・カーンは、自身の主演作品でインド映画の全世界歴代興行収入記録を5回も更新しています。特に『きっと、うまくいく』は82億円、『PK』は151億円、そして『ダンガル きっと、つよくなる』は376億円という驚異的な数字を叩き出し、その人気はインド国内にとどまらず世界中に広がっています。

彼の人物像を語る上で欠かせないのは、役柄への徹底した取り組みです。出演する作品は、脚本を心から愛せるかどうかで慎重に選び、一度出演を決めた役には完全に没入します。そのため、インドでは「Mr. Perfectionist」、日本では「ミスターパーフェクト」と称されるほどです。役柄に応じて体型を大きく変化させることでも知られており、『ガジニ』では筋肉質な肉体を、『きっと、うまくいく』では大学生らしいスリムな姿を、そして『チェイス!』では体脂肪率9%の強靭な肉体を作り上げるなど、役作りのために長期間の準備や肉体改造を厭いません。また、本人はダンスが苦手だと語っていますが、プロの指導を受けることで驚異的な上達を見せたエピソードもあります。

彼はまた、自身の社会的影響力や「物語を伝える力」を社会のために活かしたいと考えています。女性や子供の地位向上、カースト制度の問題など、インドが抱える様々な社会問題に光を当てるテレビ番組「Satyamev Jayate」の企画・司会を務めるなど、社会活動家としての一面も持ち合わせています。その活動はTIME誌にも認められ、2013年の「世界で最も影響力のある100人」の一人に選ばれています。

インド映画界では、シャー・ルク・カーン、サルマーン・カーンと共に「3大カーン」と称され、同世代のスターとして絶大な人気を誇ります。他の俳優に比べて寡作ではありますが、一本の作品に全力を注ぎ、撮影準備期間も長く取るスタイルは、そのほとんどを大ヒットさせるという結果に結びついています。ヒットが難しいとされていた歴史物やスポーツ物を成功させるなど、従来のヒンディー語映画の枠を超える作品を次々と生み出し、「映画界の変革者」と呼ばれることもあります。

2014年には『チェイス!』の日本公開に合わせて初めて来日し、日本のファンとも交流しました。その後も製作・出演した『シークレット・スーパースター』や、アミターブ・バッチャンとの共演作『ヒンドスタンのタグ』など話題作に出演。2022年には自身が主演・製作を務めた『フォレスト・ガンプ』のリメイク版『Laal Singh Chaddha』が公開されましたが、こちらは期待されたほどの興行成績には至りませんでした。

アーミル・カーンは、「夢を妥協してはいけない、夢を実現するために妥協することはあっても、夢そのものを妥協してはいけない」というモットーを掲げ、俳優、プロデューサー、そして社会活動家として、常に高みを目指し挑戦を続けています。国内外の多くの俳優や著名人からも、その演技力と社会貢献に対する高い評価を得ています。

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