シーア派

シーア派とは

シーア派（アラビア語: الشيعة、ash-Shīʻa）は、イスラム教における二大宗派の一つであり、特にアリーとその子孫が預言者モハンマドの後継者としてイスラム共同体の指導者となる権利を持つとします。彼らは「シーア」と呼ばれることがありますが、これは「党派」や「追随者」という意味から来ており、初期のシーア派の信徒たちがアリーを支持したことに由来しています。一方、もう一つの主要な宗派であるスンナ派は、ムハンマドの友人たちを指導者として認めており、こうした対立がシーア派とスンナ派の教義の違いを生んでいます。

信徒分布と地域的特徴

シーア派は、全世界のイスラム教徒の約10%から20%の信徒を持つとされ、主にイラン、イラク、レバノンなどの国に広がっています。特にイランにおいては、信者の90%から95%がシーア派であり、シーア派の信徒が世界全体の約4割を占めています。イラクでもシーア派は主流であり、宗教的な聖地であるナジャフやカルバラーには多くの信徒が訪れます。

レバノンでは、シーア派は政治的勢力としても影響力を持っており、武装組織ヒズボラが存在し、国内政治にも積極的に関与しています。また、エジプトやイエメン、バーレーンなどでもシーア派の信徒が集まっており、特にイエメンのザイド派は重要な存在です。加えて、アゼルバイジャンでは信者の85%がシーア派であり、国の文化や 정치に深く関わっています。

シーア派の思想と教義

シーア派の教義は、アリーとその後のイマームたちの教えを中心に形成されています。彼らは歴代のイマームを神から特別に選ばれた者として尊重し、彼らの知恵や行いを信仰の手本としています。これに対し、スンナ派の信徒はムハンマドの行為を重視し、彼の時代の教えに基づいて生活します。シーア派では、イマームに関する考え方が特に重要であり、最後のイマームは隠れた存在として待たれていると信じられています。

信奉者たちは、神の唯一性や正義、父なるイマームと死後の世界を理解しながら、五つの信念と十の行為を基本としています。これらの教義は、信者が何を信じ、どのように行動すべきかを具体的に示しています。特に、シーア派の理性（アクル）を重視する考え方は、法的な判断の中で大切な役割を果たします。

歴史的背景

シーア派の歴史は、ムハンマドの死後の権力闘争に根ざしています。彼の後を継ぐカリフとしてはアリーが選ばれたものの、彼は暗殺され、その後の時代にシーア派は弾圧を受けました。このため、シーア派のそれぞれの派閥や分派が形成され、時代と共に変化していきました。特に、イドリース朝やファーティマ朝など、シーア派の王朝が歴史上いくつか存在し、その中でイランのサファヴィー朝が印象的です。この王朝のもとで、広範なシーア派の信仰が一般市民にも広がりました。

現在のシーア派

21世紀において、シーア派はイランを中心に強い影響力を持っており、イランはシーア派信仰の中心地といえます。こうした状況は、シーア派の教義が国家体制とも深く結びついていることからも理解できます。また、イランのシーア派聖職者は国家元首としての役割も果たしており、政治と宗教の融合が重要なテーマとなっています。

シーア派は、歴史を通じて多くの困難を乗り越え、今なお多様な分派が存在しながら発展を続けています。現代では、国際政治にも影響を及ぼし、シーア派の存在は中東地域の地政学において無視できない要素となっています。

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