アーミン・マイヤー

アーミン・ヘンリー・マイヤー（Armin Henry Meyer, 1914年1月19日 - 2006年8月13日）は、アメリカ合衆国の外交官です。彼は国務次官補代理、駐レバノン大使、駐イラン大使といった要職を歴任し、1969年から1972年にかけて駐日大使を務めました。

マイヤーはインディアナ州フォートウェインで生まれ、リンカーン短期大学で準学士号を取得後、キャピタル大学で学士号を二つ取得、さらにオハイオ州立大学で数学の修士号を取得しました。1943年、彼は連邦政府政治情報局に入局し、その後国務省に転じました。そのキャリアを通して、彼は中東問題の専門家として活動し、イラン、エジプト、レバノン、イラクなどの中東諸国に駐在しました。

国務省では、中近東局次長、中近東局長、国務次官補代理（近東・南アジア担当）などを歴任し、その後、レバノンとイランの大使を務めました。しかし、駐日大使のポストは沖縄返還問題、日米安保条約の更新問題、繊維貿易摩擦など、多くの課題を抱えており、人選が難航していました。そのような状況の中、中東専門家であるマイヤーが駐日大使に任命されるという、いわば「瓢箪から駒」のような人事となりました。この人事は日本政府関係者からも「なじみが薄く予想外」とのコメントが出たほどで、朝日新聞の記者が国務省関係者に「新大使の適格性」を尋ねたところ、しばらく絶句したというエピソードも残っています。

マイヤーの駐日大使在任期間は、沖縄返還、日米安保条約、貿易摩擦といった問題に加え、二度にわたる「ニクソン・ショック」など、非常に多難な時期でした。ニクソン大統領とキッシンジャーは密使や密約を多用する傾向があり、マイヤーはしばしば蚊帳の外に置かれることもあったとされています。

エピソードとして、昭和天皇のヨーロッパ訪問の際、給油地であるアンカレッジでアメリカ政府代表が出迎えるべきだとワシントンに意見を具申したことが挙げられます。この進言により、ニクソン大統領自身がアンカレッジ空港に出向き、昭和天皇・香淳皇后を出迎えるという異例の対応が実現しました。また、彼は中東での経験からか、外務大臣との会談直前に「30分遅らせてくれ」と言ったという逸話も残っています。

マイヤーはアマチュア無線を趣味としており、コールサインはW3ACEでした。レバノン（OD5AX）、イラク（YI2AN）、アフガニスタン（YA1AM）など、赴任地で無線運用を行っていましたが、日本では当時の電波法により免許が得られず不機嫌だったそうです。その後、日本アマチュア無線連盟と協力して郵政省に働きかけた結果、1970年には相互運用協定締結国の有資格者は社団局の構成員として運用できることになり、彼はJH1YDRのコールサインで外国人運用第一号となりました。

著書には、『Assignment: Tokyo, an Ambassador's Journal』（1974年、日本語訳『東京回想』1976年）や『Quiet Diplomacy: from Cairo to Tokyo in the Twilight of Imperialism』（2003年）があります。

参考文献として、池井優著『駐日アメリカ大使』（文藝春秋、2001年）が挙げられます。

もう一度検索