アーラン

アーラン(Erlang)とは、電話通信の分野で用いられる、通信トラフィック量を表す単位です。無次元数であり、デンマークの電話技師、アグナー・アーランの名前に由来しています。アーランは、通信トラフィック工学や待ち行列理論において重要な役割を果たしており、システムの設計や運用において欠かせない指標となっています。

アーランの定義と計算例

1アーランとは、1つの資源が継続的に利用されている状態、あるいは複数の資源が一定割合で利用されている状態を表します。例えば、銀行のATMが2台あり、両方が常に使用されている場合、トラフィック量は2アーランとなります。

具体的な計算例として、1時間に2分間の電話対応が1000回あったとします。この場合のアーラン値は以下の計算式で求められます。

(1000回 × 2分) / 60分 = 33と1/3アーラン

このように、アーラン値は時間あたりの資源利用量を表し、システムの負荷状況を把握するのに役立ちます。

アーランの応用

アーランは、通信システムの設計や運用において様々な場面で活用されます。例えば、T1回線やE1回線では、長時間にわたるトラフィック計測データからピーク時間帯の回線利用状況を把握し、回線容量の最適化に役立てることができます。 24チャネルのうち12チャネルしか使用されていない場合、残りの12チャネルをデータ通信などに利用することが可能です。

さらに、アーラン値は、GOS(Grade of Service)やQoS(Quality of Service)といったサービス品質の評価指標の算出にも用いられます。これらの指標は、通信システムの性能や信頼性を評価する上で重要な役割を果たしています。

アーランに関する主要な公式

アーランに関する計算式には、アーランB式、拡張アーランB式、アーランC式、エングセットの公式などがあります。それぞれの式は、システムの特性に応じて使い分けられます。

アーランB式

アーランB式は、呼損系（損失系）におけるブロック確率（呼損率）を求めるための式です。呼損系とは、資源の利用要求がシステムの容量を超えた場合、その要求が拒否される（ブロックされる）システムです。待ち行列は存在しません。アーランB式は、リアルタイム性を要求される固定電話や携帯電話などのシステムに適用されます。

式は以下の漸化式で表されます。

Eb(0, t) = 1

Eb(r, t) = tEb(r-1, t) / (r + tEb(r-1, t))

ここで、rは資源数、tはアーランで表されたトラフィック量、Ebはブロック確率を表します。

拡張アーランB式

拡張アーランB式は、アーランB式を拡張したもので、ブロックされたトラフィックの一部が再度要求を行う可能性を考慮したモデルです。

アーランC式

アーランC式は、待時系における待ち確率を求めるための式です。待時系とは、資源の利用要求がシステムの容量を超えた場合、要求が待ち行列に並び、順番に処理されるシステムです。コールセンターなどのシステムに適用されます。

式は以下の通りです。

P(>0) = (A^N / N!) (N / (N - A)) / (Σ(x=0 to N-1) (A^x / x!) + (A^N / N!) (N / (N - A)))

ここで、Aはアーランで表されたトラフィック量、Nは窓口数、P(>0)は待ち確率です。アーランC式は、非リアルタイム性のあるインターネットのようなパケット交換網にも適用可能です。

エングセットの公式

エングセットの公式は、有限呼源を仮定したモデルです。アーランB式やアーランC式では無限の呼源を仮定していますが、エングセットの公式では、利用可能な呼源が限られている状況を考慮しています。

まとめ

アーランは、通信システムの設計や運用において重要な指標であり、様々な計算式が開発されています。それぞれの式は、システムの特性や目的によって使い分けられ、システムの最適化やサービス品質の向上に貢献しています。

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