イアン・ウィリアムス

イアン・ウィリアムス：弁護士として、そして伝説のラグビー選手として

イアン・ウィリアムスは、1963年生まれのオーストラリア出身の元ラグビー選手です。オーストラリア代表として17キャップを獲得し、年間最優秀選手にも選出されるなど輝かしい実績を残しました。ブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズとの対戦や世界選抜への選出経験も持ち、世界屈指のウィングとして名を馳せました。

彼のプレーの特徴は、トリッキーな動きを得意とする選手とは対照的に、圧倒的なスピードを生かしたランニングでした。そのスピードは、世界トップレベルのウィングとして認められるほどでした。

オーストラリアでの活躍だけでなく、彼はオックスフォード大学に留学し、弁護士資格を取得しています。学業とスポーツを両立させる高い能力の持ち主であり、ケンブリッジ大学との定期戦にも出場しました。ラグビーワールドカップ出場も期待されましたが、時期的な問題や怪我、監督との確執などもあり、出場は叶いませんでした。

1989年、ウィリアムスは日本へ渡り、神戸製鋼（現・神戸製鋼コベルコスティーラーズ）に入社します。当時、外国人選手は1年間の社業業務をこなさなければ公式戦に出場できないという規則がありましたが、彼は翌年からチームに合流し、持ち前のスピードを武器に、神戸製鋼黄金期の礎を築きました。

神戸製鋼では副将も務め、ワラビーズ経験者として初めて日本代表に選出され、1キャップを獲得しています。1994年に現役を引退後は、弁護士として活躍の場を移しました。神戸製鋼への入社も、弁護士としてのキャリア形成を目的とした側面があったと言われています。現在は、ハーバート・スミス・フリーヒルズ外国法事務弁護士事務所に所属し、日系企業の資源権益取得やM&Aなどを得意分野とするオーストラリアと日本の官民連携パートナーシップを法律面からサポートしています。駐日オーストラリア大使館との仕事にも携わっており、日本との関わりは現在も続いています。

卓越したプレーに加え、ファイティングスピリット、紳士的な態度、そしてリーダーシップで日本のラグビーファンを魅了しました。元衆議院議員の阪口直人氏をはじめ、多くの日本人との交流を持ち、幅広い交友関係を築いています。

奇跡の逆転劇：伝説に残るトライ

日本のラグビーファンにとって、ウィリアムスの名は1991年1月8日に行われた全国社会人ラグビー大会決勝戦と不可分です。神戸製鋼対三洋電機（現・パナソニック ワイルドナイツ）の一戦は、下馬評では神戸製鋼が圧倒的に有利と見られていました。しかし、試合は三洋電機のペースで進み、後半残り数分では12対16と三洋電機がリードしていました。

試合終了間際、三洋電機の選手がタッチキックをした瞬間、神戸製鋼の宮地監督は勝利を確信し、立ち上がってガッツポーズをとりました。しかし、主審はノーサイドの笛を吹かず、試合は続行されました。

残り時間わずかの中、神戸製鋼はFWとBKの連携プレーで攻撃を展開します。平尾誠二選手を経由し、ウィリアムスにボールが渡ります。ウィリアムスは、約50mを独走、懸命に追いかける三洋電機の選手を振り切り、トライを決めました。

トライは16対16の同点となり、両チーム優勝という状況下、トライ数の多かった三洋電機が日本選手権出場権を獲得していました。しかし、細川隆弘選手によるコンバージョンキックが成功し、神戸製鋼が18対16で逆転勝利。奇跡的な3連覇を達成したのです。ウィリアムスはこのトライで日本のラグビー史に名を刻みました。

著書

ウィリアムスは自身の経験をまとめた『奇跡への疾走』を出版しています。この本では、オーストラリアでの活躍から日本でのプレー、そして伝説のトライまでの道のりが詳細に記されています。

イアン・ウィリアムスは、ラグビー選手として、そして弁護士として、両方の世界で成功を収めた稀有な存在です。彼の功績は、これからも多くの人々に語り継がれていくでしょう。

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