イイ天気

ASKA 配信シングル「イイ天気」

「イイ天気」は、日本のシンガーソングライター、ASKAが2018年に発表した楽曲であり、同年6月25日に配信限定シングルとしてリリースされました。本作は、ASKAが2018年3月から8月までの期間にわたり、毎月一曲ずつ新作を配信するという企画の、記念すべき第4弾として登場した作品です。その配信元はDADAレーベルでした。

この楽曲は、ASKA自身が作詞、作曲、そして編曲のすべてを手がけています。特に作曲のプロセスにおいて、この楽曲は特徴的なアプローチが取られました。ASKAがアコースティックギターを用いて作曲を行ったのは、2016年にリリースされた楽曲「FUKUOKA」以来、約2年ぶりのことでした。近年はデジタルツールや他の楽器をメインに作曲することもあった中で、再びギターを手に取り生まれたメロディは、この楽曲のサウンドの基盤となっています。

歌詞の世界観もまた、「イイ天気」のユニークな要素の一つです。印象的なフレーズとして、「古い自分と戦えって　コテ・メン・ドウ　そしてスキ」という一節が含まれています。これは、日本の武道である剣道における基本的な打突部位や掛け声、そして技からインスピレーションを得たものと考えられます。「コテ（小手）」「メン（面）」「ドウ（胴）」は剣道において有効打突とされる体の部位であり、「スキ」は「突き」を意味します。しかし、歌詞における「スキ」は、単なる「突き」という意味合いだけでなく、日本語の「好き」という言葉との響きの類似性を利用した言葉遊びとして機能しています。自分自身との内なる戦いを剣道に例えつつ、そこに言葉遊びを交えることで、歌詞に独特の深みとユーモアを与えています。

楽曲のサウンド面では、ASKAのギター演奏に加え、複数のミュージシャンが制作に参加しています。ギター演奏を担当したのは鈴川真樹氏で、彼は楽曲のプログラミングにも携わりました。また、藤山祥太氏もプログラミングで参加しており、アコースティックな響きと現代的なサウンドプロダクションが融合したアレンジが実現しています。これにより、ASKAのアコースティックギターによる温かみのあるメロディラインが、洗練されたデジタルサウンドによって支えられています。

「イイ天気」は、後にCDアルバムとしてもリリースされたASKAのオリジナルアルバム『Breath of Bless』（2019年発表）に収録されました。配信シリーズの作品がアルバムにまとめられることで、より多くのリスナーに届けられる機会を得ました。

この楽曲がリリースされた2018年の配信シリーズは、ASKAがその創造的な活動を継続的に行っていることを示すものであり、ファンにとっては毎月新たなASKAの音楽に触れることができる貴重な機会でした。「イイ天気」はその中でも特に、ASKA自身によるアコースティック作曲への回帰や、遊び心あふれる歌詞世界といった特徴を持ち合わせており、彼の音楽性の幅広さを感じさせる一曲と言えます。配信という形態を通じて、制作から発表までのサイクルを短縮し、よりタイムリーに自身の音楽をリスナーに届ける試みは、当時のASKAの積極的な活動姿勢を象徴していました。

楽曲タイトルの「イイ天気」が示すように、明るく前向きな響きを持つこの楽曲は、内省的なテーマや伝統的な要素を織り交ぜながらも、聴く者に希望や活力を与えるような力を持っています。アコースティックな質感とモダンなサウンドプロダクション、そして独特の歌詞が一体となったこの楽曲は、ASKAのキャリアにおける興味深い一ページを飾る作品です。

もう一度検索