Breath of Bless

『Breath of Bless』は、日本のシンガーソングライター、ASKAが2020年に発表した通算10枚目のオリジナル・アルバムです。また、本作には同名の楽曲（全15曲中の15曲目）も収録されています。

アルバムは、CDリリースに先立ち2020年 3月6日に主要な音楽配信サービスで先行配信が開始され、同年3月20日に12cmCDとして正式に発売されました。リリース元はDADAレーベルです。

制作背景とコンセプト

オリジナルアルバムとしては、前作『Black&White』以来、約2年半ぶりの発表となった意欲作です。本作に先立ち、2019年11月には約10年ぶりとなるCDシングル「歌になりたい/Breath of Bless〜すべてのアスリートたちへ」がリリースされており、本作にはこの両A面曲が収録されました。収録曲は、既存のデジタルシングル曲や先行シングルに加え、新たな書き下ろし楽曲も加わり、全15曲が収められています。

アルバムタイトルの『Breath of Bless』は、同名で収録されたインストゥルメンタル楽曲に由来します。ASKA自身が元々インストゥルメンタル曲を好むことに加え、この楽曲が大作となったことから、シングルに留めずアルバムの顔とする強い思いが込められていると言います。

本作の制作における核となっているのは、2018年春から夏にかけて毎月デジタルリリースされた楽曲群です。これらの楽曲は、当時からシングルとして位置づけられていました。当初は1年間の連続配信も構想されましたが、それでは全12曲となりアルバムがベスト盤のような構成になってしまうことを懸念。アルバムならではのまとまりや楽しみ方を提供するため、半年でデジタルリリースを終え、残りの楽曲は本作に収録する運びとなりました。

アルバムジャケットには、ASKAの傍らに望遠鏡が配されています。これは撮影時に何か物足りなさを感じたASKAが、スタジオにあったものを偶然使用したものであり、特に深い意味は込められていないと本人は語っています。

リリースとプロモーション

本作は、通常のCD発売日（2020年 3月20日）の2週間前である3月6日には、iTunes Storeやレコチョク、moraといった主要な音楽配信サイトで先行配信が行われました。先行配信日およびCD発売日はいずれも金曜日でした。

プロモーションとしては、2020年3月13日から3月25日にかけ、タワーレコード渋谷店8階のSpaceHACHIKAIにてASKAのポップアップショップ「Breath Of Bless ASKA MUSEUM」が期間限定で開催されました。会場では、ASKAが実際に使用した貴重なギターや楽曲制作資料、ライブ写真などが展示され、「歌になりたい」のミュージックビデオ上映や、本作のハイレゾ試聴コーナーも設けられました。物販コーナーでは、ライブツアーグッズやタワーレコードとのコラボグッズも販売されました。

また、2020年3月17日から3月23日までの期間中、日本全国のローソンの店内で、一定時間本作の収録曲が店内BGMとして放送されるというプロモーションも実施されました。

楽曲解説（一部抜粋）

全15曲が収録された本作の中から、いくつかの特徴的な楽曲について以下に紹介します。

どうしたの？
素直な二人の愛を描いた純粋なラブソング。ASKAはかつて年齢的にラブソングを書くのが難しくなった時期があったものの、60代になり自然に書けるようになったと語っています。メロディや響きにはニューヨークのような雰囲気が意識されています。

忘れ物はあったかい
元々は他のアーティストへの提供曲として制作されつつも実現に至らなかった楽曲ですが、ASKA自身も気に入っていたため本作に収録されました。1987年頃を思わせる雰囲気があり、コーラスパートには特徴的なフレーズが含まれています。

百花繚乱
普段はあまり使わないという循環コードを用いて制作された楽曲。Aメロとサビで同じコード進行が使用されています。歌詞は、ビルから身を投げる男性のイメージを思い浮かべながら書かれたとのこと。「百花繚乱」という言葉は、友人との会話の中で知ったものがヒントになったと言います。

じゃんがじゃんがりん
身近な世の中をテーマにした楽曲。サビの歌詞はタイトルを繰り返す構成になっています。ASKAはこれを「歌詞ではなく、声という楽器を鳴らした」と表現しています。

消えても忘れられても
仮タイトルは「大バラード」。1970年代のメロディを追求して作られた楽曲です。間奏からエンディングにかけて、ASKAの声が12トラック多重に重ねられており、「ゴスペル風に聴こえる」と本人はコメントしています。

青い海になる
本作の中で最もダークな雰囲気を持つ楽曲。コード進行から制作が始まり、そこからリズムが構築されました。ベースを和音で鳴らす印象的なイントロのフレーズにこだわって作られています。

* We Love Music
フレディ・マーキュリーを思わせる雰囲気がある楽曲。「ドンドンカーン」というフレーズは、クイーンの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」を連想してもらっても構わないとASKAは語っています。

その他にも、デジタルシングルとして発表された「憲兵も王様も居ない城」「修羅を行く」「未来の人よ」「イイ天気」「虹の花」「星は何でも知っている」や、先行シングル曲「歌になりたい」「Breath of Bless〜すべてのアスリートたちへ」を含む全15曲が収録されています。

ASKA自身の評価

ASKAは、アルバム完成後の手応えについて「過去アルバムを作る度に『これは最高傑作です』と言い続けてきたが、その中でも最も良く仕上がったアルバム『NEVER END』（1995年発売）を本作は超えている」と、極めて高い評価をしています。また、豪華なアレンジャーを起用すれば良いアルバムになるわけではないとし、本作の制作に携わった澤近泰輔、鈴川真樹、藤山祥太といった協力者たちの存在が、この作品を完成させる上で重要であったと感謝の言葉を述べています。

長年のキャリアを経てなお進化し続けるASKAの音楽性が凝縮された、『Breath of Bless』はファン必聴の作品と言えるでしょう。

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