イェニチェリ

イェニチェリの歴史と役割

イェニチェリ（Yeniçeri）は、14世紀から19世紀初頭まで存在したオスマン帝国の常備歩兵軍団であり、その名はトルコ語で「新しい兵隊」を意味します。彼らはスプーンをシンボルとし、特に火器を用いた精鋭部隊でした。イェニチェリは、時代の進化に応じて発展し、帝国の軍事的拡大に多大な貢献をしました。

創設と初期の歴史

イェニチェリは、オスマン帝国が拡大するに際し、トルコ系の軽騎兵に依存せずに、君主の直属の兵力として誕生しました。彼らの創設時期は諸説あり、一般的にはムラト1世の治世、すなわち14世紀後半とされています。最初はキリスト教の戦争捕虜を基にした奴隷軍でしたが、15世紀には「デヴシルメ」制度により領内のキリスト教徒の子弟が徴集され、イスラム教に改宗させられ、イェニチェリとして育成されるようになりました。この制度により、優秀な人材が定期的に供給される体制が確立されました。

養成と軍団の発展

イェニチェリとしての訓練は厳格であり、徴集された者たちはまずイスラム教徒の家庭で農業労働に従事し、その後新兵軍団に加わることとなりました。彼らは君主直属の主力軍団としてイスタンブールに居住し、高い俸給や特権を享受しました。

特にスレイマン1世の治世において、火器を備えた常備歩兵が重要視される中で、イェニチェリは拡大し、軍事技術を取り入れました。しかし、彼らは次第に軍紀が乱れ、生まれながらにムスリムである者たちが増え、軍隊の世襲化が進んでいきました。

専横化と政局への介入

イェニチェリは各都市で地域の顔役として振舞うようになり、しばしば政治に介入、反乱を起こしました。特に17世紀にはスルタンを廃位に追い込む事例が多発し、16世紀から17世紀へかけて、彼らの存在がオスマン帝国の衰退の一因とされるようになります。イェニチェリは、暴力的な行動と利権を追求する姿勢から、ついには市民からも支持を失っていく事態となりました。

廃止とその後の影響

18世紀後半、イェニチェリは時代遅れの存在となり、改革の必要性が高まりました。1793年、セリム3世による新式歩兵軍「ニザーム・ジェディード」が設立され、イェニチェリは大きな反発を受けました。1807年にはセリム3世が廃位され、その後権力争いが続きましたが、最終的にマフムト2世が改革を強化しました。

1826年、イェニチェリはついにマフムト2世によって廃止されました。この出来事は、新軍団設立への礎となり、オスマン帝国の改革への大きな一歩でした。彼らの過去の横暴や権力の専横は、帝国の歴史に深い影を落としました。

文化的影響

イェニチェリはまた、オスマン帝国の軍楽、メフテルを通じて文化にも影響を与えました。彼らの存在は、全ての市民に影響を及ぼし、「なべをひっくり返す」という表現は、トルコ語で騒動や反乱を指すようになりました。このように彼らの歴史は、帝国の軍事や政治のみならず、社会全体にわたる多くの側面に影響を与えてきたのです。

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