イェータ運河

イェータ運河：スウェーデンの歴史と自然を繋ぐ水路

イェータ運河は、19世紀初頭、スウェーデンの西海岸にあるイェーテボリと、バルト海沿岸のセーデルシェーピングを結ぶ運河として建設されました。全長約200キロメートルにも及ぶこの運河は、イェータ川、ヴェーネルン湖、ヴェッテルン湖といった湖沼や河川と繋がり、スウェーデンの内陸部を東西に横断しています。

建設と歴史

イェータ運河の建設は、スウェーデン王の依頼を受け、イギリスの著名な土木技師トーマス・テルフォードが作成した計画に基づいて行われました。その後、バルツァール・フォン・プラテンが建設事業を指揮し、1810年から工事が開始され、1832年に完成しました。テルフォード自身も、初期の掘削作業の監督のためにスウェーデンを訪れています。

運河建設においては、モータラ市に小さな技術作業所「モータラ工場」が設立され、建設機械の整備や開発が行われました。この工場は、スウェーデンの土木事業の発展に大きく貢献したことから、「スウェーデンの土木事業のゆりかご」と呼ばれることもあります。

完成から間もなく、鉄道の普及により、イェータ運河は徐々にその役割を失っていきますが、その後、改良されることなく現在に至っています。

観光地としてのイェータ運河

現在、イェータ運河は、スウェーデンを代表する観光地として知られています。美しい自然景観の中を航行する運河クルーズや、歴史的な閘門を見学するツアーなどが人気です。時に「スウェーデンの一等観光地」と呼ばれることもあります。

イェータ運河を舞台にした映画

イェータ運河は、その美しい風景から、数々の映画作品にも登場しています。最も有名なのは、1981年に公開された『イェータ運河』という映画で、競争する2人のヨット建造家が、運河を舞台に巨額の建造注文を巡って争うというストーリーです。2006年には続編となる『イェータ運河2』も公開されました。

閘門

イェータ運河には多数の閘門があり、船舶の水位調節を行っています。東海岸から西海岸までの主要な閘門とその高低差（メートル）は以下の通りです。

Mem (3m)
Tegelbruket (2.3m)
セーデルシェーピング (2.4m)
Duvkullen nedre (2.3m)
Duvkullen övre (2.4m)
Mariehov nedre (2.1m)
Mariehov övre (2.6m)
Carlsborg nedre (5.1m)
Carlsborg övre (4.7m)
Klämman (open)
Hulta (3.2m)
Bråttom (2.3m)
Norsholm (0.8m)
Carl Johans slussar (seven locks, 18.8m)
Oskars slussar (4.8m)
Karl Ludvig Eugéns slussar (5.5m)
Brunnby (5.3m)
Heda (5.2m)
Borensberg (0.2m)
Borenshult (15.3m)
モータラ (0.1m)
ヴェッテルン湖
Forsvik (3.5m)
Tåtorp (0.2m)
Hajstorp övre (5.0m)
Hajstorp nedre (5.1m)
Riksberg (7.5m)
Godhögen (5.1m)
Norrkvarn övre (2.9m)
Norrkvarn nedre (2.9m)
Sjötorp 7-8 (4.6m)
Sjötorp 6 (2.4m)
Sjötorp 4-5 (4.8m)
Sjötorp 2-3 (4.8m)
Sjötorp 1 (2.9m)

これらの閘門は、イェータ運河を航行する船舶にとって重要な役割を果たしており、運河の歴史と技術を物語る重要な建造物でもあります。

参考文献

Eric de Maré, Swedish Cross Cut, Sweden, 1965. (In English)
* 深井節子文・絵『イェータ運河を行く』（福音館書店、『たくさんのふしぎ』第99号、1993年6月）

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