たくさんのふしぎ

たくさんのふしぎ：長く愛される科学絵本シリーズ

「たくさんのふしぎ」は、福音館書店が1985年4月に創刊した、小学3、4年生を対象とした月刊科学絵本シリーズです。毎月、魅力的な科学のテーマを取り上げ、40ページにわたって分かりやすく解説しています。

多彩な執筆陣と魅力的なテーマ

このシリーズの特徴は、第一線で活躍する多様な執筆陣が参加している点です。谷川俊太郎氏、星野道夫氏、角野栄子氏といった著名な作家や、科学者、写真家など、それぞれの専門分野の第一人者たちが、子どもたちの視点に立った魅力的な文章と美しいイラスト、写真で科学の世界を描き出しています。

毎月異なるテーマが選ばれ、自然科学、社会科学、人文科学など、幅広い分野の科学的な知識を学ぶことができます。子どもたちの探究心を刺激するような、興味深く、かつ分かりやすい内容が特徴です。

人気作品と単行本化

「たくさんのふしぎ」で掲載された作品の中には、高い人気を誇り、単行本として出版されたものが多数あります。「たくさんのふしぎ傑作集」として福音館書店から刊行されている他、他社から単行本化された作品も存在します。傑作集では、初出時からの表紙や記述を一部改訂し、より洗練された形で読者に提供されています。中には、月刊誌掲載から10年以上を経て、傑作集で復刊される作品もあります。これらは、長年にわたる「たくさんのふしぎ」の高い評価と、作品自体の普遍的な魅力を証明しています。

巻末の「ふしぎ新聞」

雑誌の巻末には、「ふしぎ新聞」と呼ばれる新聞形式の連載ページが掲載されています。ここでは、著者のコメントや、読者からの投稿を紹介する「みみずの学校コーナー」など、様々な情報が掲載されています。「みみずの学校コーナー」では、編集者である高橋幸子氏と読者との交流が活発に行われ、読者参加型の企画として、毎月のテーマに沿った活発な意見交換の場となっています。

福音館書店の他の科学絵本

福音館書店は、「たくさんのふしぎ」以外にも、年齢層に合わせた科学絵本シリーズを刊行しています。「かがくのとも」は5〜6歳向け、「ちいさなかがくのとも」は3〜5歳向けに刊行され、それぞれ年齢に合わせた科学的な内容を提供することで、子どもたちの科学への興味を育むことに貢献しています。

代表的な単行本化作品

「たくさんのふしぎ」から単行本化された作品は、そのテーマの多様性と、質の高さが際立っています。以下は、特に人気の高かった、または教育的価値の高い作品の一例です。

1980年代: 「いっぽんの鉛筆のむこうに」（谷川俊太郎）、 「鬼が出た」（大西広）、 「おしっこの研究」（柳生弦一郎）、 「さかさまさかさ」（野崎昭弘）など。
1990年代: 「アラスカたんけん記」（星野道夫）、 「言葉はひろがる」（鶴見俊輔）、 「絵ときゾウの時間とネズミの時間」（本川達雄）など。
2000年代: 「手で食べる?」（森枝卓士）、 「こんにちは、ビーバー」（佐藤英治）、 「和菓子のほん」（中山圭子）など。
2010年代: 「モグラの生活」（飯島正広）、 「ゴリラが胸をたたくわけ」（山極寿一）、 「みんなでつくる1本の辞書」（飯田朝子）など。

これらの作品は、単に科学的事実を伝えるだけでなく、自然への畏敬の念、人間の知恵、文化の多様性など、子どもたちが将来社会を生きていく上で必要な様々な価値観を学ぶ機会を提供しています。

他社からの単行本化と関連書籍

「たくさんのふしぎ」で掲載された人気作品は、福音館書店だけでなく、他社からも単行本化されています。また、シリーズの200号記念として発行された「ふしぎふしぎ200」なども、シリーズの価値を高めています。

喫煙描写による販売中止

2010年2月号の『おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり』は、作品内の喫煙描写が問題となり、販売中止となりました。これは、世界保健機関（WHO）のたばこ規制枠組条約に抵触する可能性があったためです。この出来事は、出版物における社会的な責任の重要性を改めて認識させる契機となりました。

「たくさんのふしぎ」は、単なる科学絵本シリーズを超え、子どもたちの知的好奇心と感性を育む上で大きな役割を果たしてきたと言えるでしょう。これからも、新たな発見と感動を与え続けることを期待されています。

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