イオヘキソール

イオヘキソール（Iohexol）は、医療現場で広く使用されている画像診断用の造影剤です。いくつかの製品名で流通しており、特に「オムニパーク（Omnipaque）」という商標で知られています。

この薬剤は、X線やコンピュータ断層撮影（CTスキャン）において、体内の特定の部位をより鮮明に可視化するために用いられます。具体的には、動脈や静脈といった血管系のほか、脳脊髄液が流れる脳槽、尿が通過する尿路、そして関節腔などの構造を詳細に描出する際に重要な役割を果たします。

イオヘキソールの投与方法は多様であり、検査の目的や対象となる部位に応じて選択されます。一般的な方法として、血管内に直接注入する点滴静脈注射や、消化管の検査のために口から服用する経口投与があります。また、特定の体腔内、例えば関節内や脳脊髄液腔などに直接注入されることもあります。

薬剤の特性としては、非イオン性であること、そして浸透圧濃度が比較的低いことが挙げられます。これらの特性は、従来の造影剤と比較して体への負担が少ないとされる理由の一つです。

しかし、他の多くの薬剤と同様に、イオヘキソールの使用においても副作用が生じる可能性があります。比較的よく見られるものとしては、吐き気や嘔吐、皮膚の発赤や痒み、頭痛、血圧の低下などがあります。まれではありますが、より重篤な副作用として、アレルギー反応や発作が起こることも報告されています。

特定の体質を持つ人は、副作用のリスクが高まることが知られています。例えば、ポビドンヨードや貝類に対するアレルギーがある場合、その他のアレルギー体質を持つ人よりも副作用を発現しやすい傾向があります。また、妊娠後期の女性がイオヘキソールを使用した場合、新生児の甲状腺機能に影響を及ぼし、機能低下を引き起こす可能性が指摘されており、注意が必要です。

イオヘキソールが医薬品として承認されたのは1985年のことです。その効果と安全性は国際的にも認められており、世界保健機関（WHO）が定める必須医薬品モデルリストにも掲載されています。これは、基礎的な医療制度において最も重要で必要不可欠な医薬品の一つとして位置づけられていることを意味します。

経済的な側面を見ると、その価格は地域によって異なります。開発途上国における卸売価格の一例として、50mLバイアルあたり約10.99米ドル程度とされています。一方、米国などでは1回の投与あたり50米ドルから100米ドル程度が一般的な価格帯となっています。このように、地域や流通形態によって価格に差が見られます。

総じて、イオヘキソールは現代の医療において画像診断を支える重要な造影剤であり、その用途の広さと比較的低い副作用リスクから広く利用されていますが、使用にあたっては適切な投与方法と副作用への注意が不可欠です。

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