ポビドンヨード

ポビドンヨードについて

ポビドンヨード（Povidone iodine, PVPI）は、ポリビニルピロリドンとヨウ素の複合体であり、医薬品として日本薬局方にも収載されています。暗赤褐色の粉末で、わずかな匂いがあり、通常は10%程度の水溶液として外用消毒薬に用いられます。WHO必須[[医薬品モデル・リスト]]にも掲載されている殺菌剤です。

歴史

1956年にアメリカで開発され、日本では1961年に明治製菓（現Meiji Seika ファルマ）が殺菌消毒剤及びうがい薬として医薬品承認を得ました。「イソジン」の商品名で広く知られていますが、2016年以降は塩野義製薬が販売しています。ムンディファーマは海外で「BETADINE(ベタダイン)」ブランドで販売しており、うがい薬、きず薬、殺菌消毒剤に加え、ボディソープやフェミニンケア製品も展開しています。

薬効

ポビドンヨードの殺菌効果は、遊離ヨウ素によるものです。ヨウ素は強力な殺菌作用を持ちますが、従来のアルコール溶液は刺激が強いため粘膜には使用できませんでした。ポビドンヨードはポリビニルピロリドンとの錯化合物として合成され、うがい薬から手術時の消毒、創傷部位や熱傷皮膚面の消毒など、広範囲に使用されています。

殺菌作用は塗布後30-60秒で最大となり、持続効果が高いことが特徴です。芽胞菌にも有効性を示すため、院内感染対策としても注目されています。衣服に着色した場合は、チオ硫酸ナトリウムのエタノール溶液（ハイポアルコール）で色を消すことができます。

イソジンガーグルをはじめ、手指消毒剤、塗布剤、水溶液剤、アルコール製剤、含浸綿製品、ソフトコンタクトレンズ洗浄剤など、様々な商品があります。

副作用

イソジンガーグル液7%の添付文書によると、副作用の発現率は低いものの、嘔気、口内刺激、不快感などが報告されています。重大な副作用として、ショックやアナフィラキシー様症状が現れることがあるため、注意が必要です。

禁忌として、本剤またはヨウ素に対し過敏症の既往歴のある患者が挙げられます。甲状腺機能に異常のある患者には慎重投与が必要です。

ヨードうがい薬液の頻回な使用は、喉の粘膜細胞を傷つけ、風邪を引きやすくする可能性があるため推奨されていません。過剰なヨウ素摂取は、甲状腺ホルモン合成を抑制するウォルフ-チャイコフ効果を引き起こす可能性があります。

イソジン

ポビドンヨードを有効成分とする殺菌・消毒剤の世界的ブランドで、日本では明治製菓が発売し、カバくんのイラストで親しまれていました。2016年からはシオノギヘルスケアが販売を行っています。

明治はイソジンブランドを外し、中身とデザインが同じ「うがい薬」などを販売していましたが、2022年11月に健栄製薬が製造販売承認を承継し、「健栄うがい薬」に製品名が変更されました。

ムンディファーマはイソジンブランドの医療用医薬品の製造販売承認を承継し、様々な製品を発売しています。また、ポビドンヨードを含まないイソジン除菌ウェットシートや、セチルピリジニウム塩化物水和物を有効成分とするイソジンクリアうがい薬なども販売しています。

その他注意事項

ポビドンヨードは「ポピドンヨード」と誤記されることがあります。電気的な絶縁性を持つため、電気メス使用時は対極板との間に液が入らないよう注意が必要です。皮膚に使用すると色素沈着を起こすことがあり、眼に使用する際は希釈液を用いることが推奨されます。

福島第一原子力発電所事故の際、ポビドンヨードを安定ヨウ素剤の代用とするデマがSNSで拡散されましたが、効果がないばかりか有害物質が含まれる可能性もあるため、絶対に飲用しないでください。

関連項目

ヨウ素剤
消毒薬
塩化ベンザルコニウム
塩化ベンゼトニウム
クロルヘキシジン
クロロキシレノール
* マーキュロクロム液

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