イカダモ

イカダモ（Scenedesmus）の概要

イカダモは淡水に生息する緑藻の一種で、特に水田や池、沼の環境でよく見られます。これらの藻類は、複数の細胞が一列に並んで構成された群体を形成し、その形状から「イカダモ」という名前が付けられました。このような形の群体を持つことが特徴であり、運動性が乏しいため、観察するのに適しています。

群体の構造

イカダモは通常、2n（n=0-5）の細胞からなる群体を形成します。一般的には4から8細胞の群体が見られますが、特定の条件下では群体を形成しない単細胞個体も存在します。イカダモの群体は細胞が一列または二列に配置されており、デスモデスムスという別属の藻類の場合、群体の両端にはよく発達した棘を持つことが多いです。

このような群体は細胞壁で繋がっており、その位置は変わりません。また、細胞外に多糖類を分泌し、群体全体を寒天質に包むこともあります。これにより、パルメラ状群体と呼ばれる構造が形成されることがあります。両属ともに細胞は鞭毛を持たず、まったくの運動性がありません。

細胞の特徴

イカダモの細胞は楕円形から餃子型、あるいは弓形をしています。細胞壁は二層構造で、内側にはセルロース繊維、外側にはスポロポレニンという強靭な樹脂が含まれています。デスモデスムスでも同様の細胞壁を見せますが、群体の形状の違いにより個々の細胞の形状には微妙な違いがあります。また、この細胞壁の表面にはさまざまな凹凸があり、これは光学顕微鏡では観察できず、走査型電子顕微鏡が必要です。

通常、どちらの属の細胞にも１つの細胞核が存在し、成熟した個体では多核であることが一般的です。細胞内の葉緑体は１つで、細胞膜に沿った位置に配置されています。含まれる光合成色素はクロロフィル a/b で、この葉緑体内にはピレノイドが存在し、一般的な緑藻と同じようにデンプンを蓄積しています。

生殖方法

イカダモの生殖は無性生殖と有性生殖の両方が知られています。無性生殖の際には各細胞が細胞壁内で分裂し、娘細胞を作ります。この新しい娘細胞は親細胞から離れて再び群体を形成します。有性生殖の場合、配偶子が形成され、同形配偶子接合を行いますが、このプロセスの詳細はまだわからない部分が多いです。

分類の変遷

2000年にはイカダモ属の分類体系に大きな変更がありました。もともと「デスモデスムス」はイカダモ属の亜属として設立されていましたが、分子系統解析や細胞の形状を基にして別属として分離されました。この結果、以前はイカダモ属に属していた多くの種はデスモデスムスに分類されることになりました。イカダモの仲間は種内変異が大きいため、同定は形のみに頼ることが難しく、特に細胞が大きく湾曲した種はアクトデスムス属として別属に分類されることもあります。

イカダモの利用

イカダモは生育が容易で増殖が速いため、水中の過剰な栄養塩の除去や、淡水魚の飼育における餌としての利用が進められています。また、新しい化学物質の審査に際しては、Desmodesmus subspicatusがOECDのガイドラインに基づいて使用されており、その経済的価値が注目されています。

主な種

セネデスムス属 (Scenedesmus)

• - S. acumunatus
• - S. dimorphus
• - S. disciformis
• - S. ovaltermus

デスモデスムス属 (Desmodesmus)

• - D. armatus
• - D. arthrodesmiformis
• - D. asymmetricus
• - D. bicellularis
• - D. brasiliensis
• - D. communis
• - D. cuneatus
• - D. denticulatus
• - D. fennicus
• - D. hystrix
• - D. komarekii
• - D. lefevrei
• - D. maximus
• - D. multivariabilis
• - D. opoliensis
• - D. pannonicus
• - D. perforatus
• - D. pirkollei
• - D. pleiomorphus
• - D. quadricauda
• - D. serratus
• - D. subspicatus
• - D. tropicus

イカダモはその状態や利用目的から、今後の研究や応用が期待される生物です。

もう一度検索