イギリスの宗教

イギリスの宗教：多様な信仰と歴史的背景

イギリスは、多様な宗教が共存する国です。キリスト教が主要な宗教である一方、無宗教者の割合も高く、イスラム教、ヒンドゥー教、仏教など、様々な宗教を信仰する人々が暮らしています。近年では、移民の増加に伴い、イスラム教徒の割合が増加しており、同時にイスラム教に対する偏見や恐怖、極右勢力の台頭といった社会問題も顕在化しています。このような社会情勢を理解するためには、イギリスにおける宗教の歴史を振り返ることが不可欠です。

キリスト教：国教としての歴史と分派

イギリスにおけるキリスト教の歴史は古く、6世紀にローマから布教が始まりました。その後、イングランド国教会が成立するまでの過程において、国王とローマ教皇との対立、宗教改革、ピューリタンの台頭など、数々の重要な出来事がイギリスの宗教情勢を形作ってきました。
ヘンリー8世によるローマからの独立とイングランド国教会の設立は、イギリスの宗教史における大きな転換点でした。王の離婚問題をきっかけに始まった宗教改革は、カトリック教会からの離脱とイングランド国教会の確立をもたらし、宗教的・政治的な激変を招きました。その後、女王メアリー1世によるカトリックへの回帰の試みは失敗に終わり、エリザベス1世の治世においてイングランド国教会が国教として確立されました。

スコットランドでも、宗教改革は大きな影響を与えました。ジョン・ノックスらによって指導されたスコットランド長老教会は、イングランド国教会とは異なるカルヴァン主義的な特徴を持ち、独自の道を歩みました。アイルランドにおいては、イングランドによる支配下でアイルランド国教会が設立されましたが、アイルランド国民の多くはカトリック信仰を堅持し、国教会への抵抗を続けました。19世紀以降、カトリック信者の増加は、アイルランドからの移民だけでなく、冷戦期におけるポーランドやウクライナからの移民も大きく寄与しています。

ユダヤ教：迫害と社会的地位の変遷

イギリスにおけるユダヤ人の歴史は、ノルマン・コンクエストの時代まで遡ります。しかし、長らく反ユダヤ主義の風潮が根強く、社会的に厳しい立場を強いられてきました。シェイクスピアの戯曲『ヴェニスの商人』にも描かれているように、ユダヤ人に対する偏見や差別は社会に深く根付いていました。19世紀以降、ロスチャイルド家などの台頭や、ドイツからのユダヤ人亡命者の流入によって、イギリスにおけるユダヤ人の社会的地位は向上し、政治・経済・学術の各分野で重要な役割を果たすようになりました。

近年の宗教情勢

近年、イギリスではイスラム教徒の増加が目立ちます。しかし、9.11アメリカ同時多発テロ事件やロンドン地下鉄爆破事件をきっかけに、イスラム恐怖症が広がり、社会問題となっています。また、イギリス国民党などの極右勢力の台頭も、宗教的多様性への脅威となっています。

まとめ

イギリスの宗教状況は、歴史的背景、社会情勢、移民の流入など、様々な要因が複雑に絡み合って形成されています。キリスト教を基盤としながらも、多様な宗教が共存し、それぞれの宗教が社会に影響を与え、社会問題も抱えている現状を理解するためには、歴史的視点と社会情勢への理解が不可欠です。 今後のイギリス社会において、宗教的多様性をどのように受け止め、共存していくかが重要な課題となっています。

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