イギリスの経済

イギリス経済：世界を舞台に躍動する経済大国

イギリスは、世界第5位の名目GDPを誇る経済大国です。購買力平価ベースでは世界9位に位置し、世界経済の3.5%を占める規模を有します。2016年第二四半期には前年比2.2%の成長率を記録、4年連続でG7諸国の中で最も高い経済成長を達成しました。輸出額は世界11位、輸入額は世界6位であり、対内・対外直接投資ともに世界2位と、グローバル経済において極めて高い国際化を推進しています。

産業構造：多様な産業が支える経済基盤

イギリス経済を支えるのは、多様な産業です。GDPの約78%を占めるサービス業がその中心を担います。中でも金融サービスは基幹産業であり、ロンドンは世界有数の金融センターとして君臨しています。製薬業界も世界3位の医薬品研究開発シェアを誇るなど、重要な役割を果たしています。

一方、製造業はGDPに占める割合は減少傾向にありますが、輸出においては依然として重要な位置を占め、特に自動車産業は国内の主要な雇用創出と輸出品目の源泉です。また、イギリスは豊富な石炭、天然ガス、原油資源を有しており、2015年の推定埋蔵量は原油だけで29億バレルにも上ります。

農業・漁業は、GDPに占める割合は小さいものの、食糧自給率70%を超える集約的農業と、多様な水産物を水揚げする盛んな漁業によって、国民経済を支えています。

エネルギー政策：化石燃料から再生可能エネルギーへの転換

イギリスのエネルギー事情は、化石燃料への依存度が高いという課題を抱えています。GDPの10%をエネルギー製品が占め、これは先進国の中でも最も高い割合です。北海油田の開発によって、1990年代には西ヨーロッパでノルウェーに次ぐ産油国となりましたが、電力供給の75%は依然として化石燃料に依存しています。

政府は、京都議定書に署名し、気候変動プログラムを発表するなど、二酸化炭素排出量削減に積極的に取り組んでいます。再生可能エネルギー、特に風力発電の導入拡大を目指していますが、化石燃料への依存からの脱却は、エネルギー政策における重要な課題となっています。島国である地理的条件を活かした、海上風力発電などの可能性にも期待が寄せられています。

かつては国営化されていた電力事業も、1990年代以降民営化され、現在では複数の民間企業が電力供給を担っています。

金融：世界をリードする金融センター

ロンドンは世界有数の金融センターとして、シティとカナリーワーフを中心に、多くの金融機関が拠点を構えています。ロンドン証券取引所、ロイズ保険市場、イングランド銀行などが存在感を示し、国際的なユーロ債市場、外国為替市場、エネルギー市場、保険市場などを主導しています。

エディンバラも、ヨーロッパ有数の金融センターとして、歴史と伝統を誇ります。

その他の産業：多様な分野で存在感を示す

観光業はイギリス経済の重要な柱であり、年間760億ポンド規模の市場を形成しています。また、広告、映画、テレビ番組制作、デザイン、出版、音楽、美術品取引など、創造的な産業も近年高い成長を遂げています。

小売業は競争が激しく、GDPの約22%を占める巨大市場を形成しています。郊外型大型店から都市型ショッピングセンター、コンビニエンスストアまで、多様な形態の小売店舗が競争を繰り広げています。

経済政策：自由放任主義と政府の役割

1979年以降、イギリスの経済政策は自由放任主義を基調としています。政府の関与は主に英国財務省が主導し、市場自由化、減税、規制緩和の原則に従って経済運営が行われています。イングランド銀行は、インフレ目標達成のための金利政策を担っています。スコットランド政府は、一定の税制上の権限を有していますが、未だ行使されていません。

地域格差：地域間の経済力のばらつき

イギリスでは、地域間の経済格差が顕著です。ロンドンは圧倒的な経済規模を誇り、1人当たりGDPはイギリスの中でも最も高い水準です。一方、地方地域では経済活動が低迷している地域もあり、地域間の経済格差是正が課題となっています。

将来展望：課題と可能性

イギリス経済は、高い成長率を維持しながらも、所得格差の拡大、エネルギー政策、Brexit後の経済状況など、多くの課題を抱えています。これらの課題への対応が、今後のイギリス経済の持続的な発展において重要な鍵となります。一方で、世界をリードする金融センターとしてのロンドンの地位、活気ある創造産業、そして潜在的な再生可能エネルギー資源など、明るい展望も存在します。今後、これらの強みを活かしながら、課題を克服していくことが求められます。

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