イグニッションコイル

イグニッションコイルの概要

イグニッションコイルは、内燃機関において火花点火に必要な高電圧を生成するための重要な部品です。このコイルは、内燃機関の点火プラグで放電することで燃料を点火させます。日本語では「点火コイル」とも呼ばれ、英語では「スパークコイル」として知られています。

構造と動作原理

イグニッションコイルは、誘導コイルの原理を基に作られています。内部には、ひとつの鉄芯（コア）を持ち、巻き数の異なる二つのコイルが巻かれています。このうち、巻数の少ないものを「一次コイル」、巻数の多いものを「二次コイル」と呼びます。一次コイルには、バッテリーなどから電力が供給され、スイッチ機構を通じて電流が流れます。

スイッチが閉じると、一次コイルに磁界が生成され、その磁界が二次コイルにも伝わります。この状態でスイッチが開かれると、磁界の変化が生じ自己誘導作用によって一次コイルに電圧が発生し、相互誘導によって二次コイルにも電圧がかかります。この構造により、一次コイルよりも高い電圧を二次コイルで得ることができるのです。イグニッションコイルでは、点火プラグのために必要な25 - 35 kVという高圧を生成します。

一次コイルには正極と負極の端子がある一方で、二次コイルは多くの場合、点火プラグやディストリビューターに接続する端子が設けられています。この接続により、点火が行われます。

磁路の種類

イグニッションコイルの核心となる部分には、開磁路型と閉磁路型の二つの形状があります。開磁路型は、コイルの外側を通る磁力線を持ち、コアの一端から出発し、またコアに戻ります。しかし、この構造では磁力線が周囲に影響を及ぼす可能性があるため、金属製の筐体で遮蔽する必要があります。

一方、閉磁路型では、コアの内部を通る磁力線で構成されています。このタイプのコイルは、磁界漏れが少なく、小型化が可能です。そのため、現在の多くのイグニッションコイルは閉磁路型が主流となってきています。

自動車における役割

自動車では、イグニッションコイルから生成された電気がディストリビューターを経由して各気筒に分配されます。初めは機械的なスイッチで電圧が供給されましたが、技術の進化によりトランジスタ方式のイグナイターが導入され、さらに機械的接点を排除したフルトランジスタ式へと進化しました。

近年、ディストリビューターをなくした「ディストリビューター・レス・イグニッション(DLI)」が登場し、各気筒に独立したコイルを持つ構造となっています。これにより電力ロスが削減され、点火時期も電子的に制御されるようになりました。

また、オートバイでは、多くの場合、各気筒に1つのイグニッションコイルが使われますが、エンジンの種類によっては2気筒を同時に点火する方式も広く採用されています。このように、イグニッションコイルはエンジンの点火を支える重要な役割を果たしています。

結論

イグニッションコイルは内燃機関において欠かせない部品であり、その進化はエンジンの燃焼効率や性能向上に寄与してきました。今後もさらなる技術革新が期待される分野でもあります。

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