イシサンゴ目(Scleractinia)について
イシサンゴ目(Scleractinia)は、花虫綱に属する生物群で、
炭酸カルシウムでできた硬い骨格を形成する特徴を持ちます。一般に「ハードコーラル」とも呼ばれ、特に
造礁サンゴとして知られています。
一般的にサンゴと呼ばれるものの多くは、この
造礁サンゴを指します。特にミドリイシ科のサンゴは観賞用としても人気が高く、水槽で飼育されることもあります。
造礁サンゴは、太陽光が十分に届く浅い海域に生息しています。
炭酸カルシウムの骨格を形成するため、海水中のカルシウムを大量に消費します。また、体色はその組織内に共生する褐虫藻の色に大きく依存しており、緑、ピンク、紫、褐色、青など、非常に多様な色彩を見ることができます。
褐虫藻は光合成を行い、その際に生成した栄養をサンゴに供給することで、サンゴは成長に必要なエネルギーを得ています。この共生関係のため、サンゴは強い光を必要とし、高水温には弱いという特性を持ちます。水温の上昇やその他の環境変化により、褐虫藻がサンゴの組織から抜け出てしまうと、サンゴは白化現象を起こし、最終的には死滅してしまうことがあります。
造礁サンゴの形態は非常に多様で、テーブル状、枝状、球体状、塊状など、様々な形があります。
分類
イシサンゴ目は、約1300種の現生種が確認されていますが、そのうち約半数は褐虫藻を共生させていません。浅海に生息する褐虫藻を持つ種については比較的よく研究が進んでいますが、深海に生息する非褐虫藻種については研究が遅れており、今後さらに多くの種が発見される可能性があります。
種内変異が大きいことに加え、種間で形態が連続的に変化するため、イシサンゴ目の分類体系は非常に複雑で、安定していません。伝統的には、骨格の形態に基づき5〜6亜目に区分されてきましたが、2016年には分子系統解析に基づき、シズカテマリ亜目とナミフウセン亜目の2亜目に再分類する説が提唱されました。
本稿では、World list of Scleractinia(Hoeksema & Cairns, 2024)に従い、以下の分類を紹介します。
和名については、杉原ほか(2015)、野村ほか(2016)、深見・北野(2023)を参考にしました。
Refertina シズカテマリ亜目
Acroporidae ミドリイシ科
Agariciidae ヒラフキサンゴ科
Dendrophylliidae キサンゴ科(スリバチサンゴ科)
Euphylliidae ハナサンゴ科 - ハナサンゴ属
Euphyllia、ナガレハナサンゴ属
Fimbriaphyllia、アザミサンゴ属
Galaxea など
Flabellidae センスガイ科
Fungiacyathidae 科
Pachyseridae 科 - リュウモンサンゴ属 Pachyseris
Poritidae ハマサンゴ科
Rhizangiidae シオガマサンゴ科 - ニセヤスリサンゴ属 Psedosiderastrea
など
Turbinoliidae ツツミサンゴ科
Vacatina ナミフウセン亜目
Anthemiphylliidae 科
Astrangiidae 科
Astrocoeniidae ムカシサンゴ科
Bathyporidae 科
Caryophylliidae チョウジガイ科
Cladocoridae 科
Coscinaraeidae ヤスリサンゴ科
Deltocyathidae 科
Diploastraeidae ダイオウサンゴ科
Faviidae 科(旧キクメイシ科)
Fungiidae クサビライシ科
Leptastreidae ルリサンゴ科
Lobophylliidae オオトゲサンゴ科 - ハナガタサンゴ属 Lobophyllia
、オオトゲキクメイシ属 Acanthastrea
など
Meandrinidae 科
Merulinidae サザナミサンゴ科 - サザナミサンゴ属 Merulina
、キクメイシ属 Dipsastraea
など
Micrabaciidae 科
Montastraeidae 科
Oculinidae ビワガライシ科
Oulastreidae 科 - キクメイシモドキ属 Oulastrea
Plerogyridae ミズタマサンゴ科
Plesiastreidae 科 - コマルキクメイシ属 Plesiastrea
Pocilloporidae ハナヤサイサンゴ科
Psammocoridae アミメサンゴ科
脚注
分類はWorld list of Scleractinia(Hoeksema & Cairns, 2024)に従っています。
和名は主に杉原ほか(2015)・野村ほか(2016)・深見・北野(2023)を参照しています。
外部リンク
日本産有藻性サンゴ類WEB図鑑 - 日本造礁サンゴ分類研究会