イシチドリ

イシチドリ（石千鳥）

分類学上、イシチドリはチドリ目イシチドリ科に属する鳥類の一種で、その学名は Burhinus oedicnemus とされています。この名称は、石の多い環境に生息し、チドリの仲間であることに由来すると考えられています。

形態

イシチドリは、一般的なチドリ類と比較して大型の鳥です。全長は約40〜44センチメートル、翼を広げると70〜80センチメートルほどの大きさになります。最も特徴的なのは、周囲の環境、特に石や乾燥した地面に溶け込むような褐色の羽色です。背中側は灰褐色や黄褐色の地色に黒い縦斑や横斑が不規則に入り、腹側は淡色です。静止しているときは、地面の石や枯れ木に驚くほどよく似ており、発見するのが難しいことがしばしばあります。大きな目も特徴の一つで、夜間や薄明薄暮時の活動に適応していることを示唆しています。嘴は比較的太く、先端がやや曲がっています。脚は長く頑丈で、地面を歩き回るのに適しています。足の指は3本で、後指はありません。

生態

イシチドリは主に夜間や薄明薄暮時に活動する鳥です。日中は乾燥した開けた場所、例えば荒れ地、砂利の河原、草原、耕作地などでじっとして過ごすことが多く、その保護色の体と動かない習性によって捕食者から身を守ります。危険を感じると、地面にうずくまってさらに目立たなくなります。食性は動物食で、主に昆虫類、ミミズ、トカゲ、カエル、小型の哺乳類などを捕らえて食べます。地面を歩きながら獲物を探したり、時には短い距離を走って捕まえたりします。

繁殖期には、オスとメスがペアを形成します。巣は地面のくぼみを簡単な材料で整えただけの簡素なものです。通常、2個の卵を産みます。卵の色も地面に擬態するような保護色をしています。抱卵と育雛はオスとメスの両方が行います。雛は早成性で、孵化後比較的短時間で歩き回ることができるようになります。

鳴き声は非常に特徴的で、夜間に「クーリー」「クーリー」あるいは「キュウー」と響くような声を発することが知られています。この鳴き声は比較的遠くまで届き、繁殖期には縄張りを主張したり、パートナーとコミュニケーションをとったりするために使われると考えられています。

生息地と分布

イシチドリは、乾燥した開けた環境を好んで生息します。具体的には、石や砂利の多い荒れ地、草地の開けた場所、河原、時には農耕地や牧草地などでも見られます。隠れる場所が少ない環境で、地面に擬態する能力を最大限に活かしています。

分布域は広く、主にユーラシア大陸の温帯域から亜熱帯域、そしてアフリカ北部にわたって生息しています。ヨーロッパ、北アフリカ、中東、中央アジア、南アジアの一部などで見られます。日本では本来の分布域に含まれませんが、稀に迷鳥として飛来し、観察されることがあります。

関連項目

チドリ目
イシチドリ科
* 鳥類

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