チドリ目

チドリ目：多様な水鳥と海鳥の世界

チドリ目は、鳥類を分類する目の一つであり、カモメ、アジサシ、チドリなど、多様な水鳥や海鳥を含む大きなグループです。約19科390種もの鳥たちがこの目に属し、世界中の様々な環境に適応して生息しています。

生息環境と食性

チドリ目の鳥たちは、主に湿地、干潟、川原といった水辺環境を好んで生活します。淡水域や沿岸部で暮らす種類が多いですが、イシチドリのように砂漠や半砂漠に生息するものもいます。また、ウミスズメのように沖合を主な生活圏とする海鳥も含まれます。

食性も多様性に富んでおり、多くの種が魚や甲殻類などの小動物を捕食しています。しかし、ヒバリシギのように種子を食べる種や、サヤハシチドリのように腐肉を食べる種も存在します。さらに、カモメ類の一部も腐肉を食べるなど、食性の幅広さが特徴の一つです。

系統と分類：複雑な進化の歴史

チドリ目の系統進化は、長年研究者の間で議論されてきました。Baker et al. (2007), Ödeen et al. (2010), Pereira & Baker (2010)らの研究により、チドリ目の内部系統に関する理解は深まりましたが、依然として未解明な点も多く残されています。

現生鳥類の大部分を占めるCoronavesというグループに属し、その中で唯一単系統をなす目であるという説が有力です。姉妹群については、「landbirds」（スズメ目など陸生鳥類を含むグループ）の可能性が高いとされていますが、これについては異論も存在します。以前はツル目やハト目との近縁性が示唆されることもありました。

亜目と科：多様な分類体系

国際鳥類学会議（IOC）の分類では、チドリ目は19科に分類されています。かつてはツル目ミフウズラ亜目に分類されていた2科18種も、現在ではチドリ目に含まれています。チドリ科、シギ科、カモメ科の3科には、チドリ目の種の約7割が属しており、これらの科がチドリ目を代表するグループと言えるでしょう。

伝統的には3亜目（チドリ亜目、カモメ亜目、ウミスズメ亜目）に分類されてきましたが、最近の分子系統解析に基づいた分類では、3亜目よりも詳細な分類体系が提唱されています。例えば、6亜目とする分類体系があり、それぞれ以下の科が含まれます。

サヤハシチドリ亜目: イシチドリ科、サヤハシチドリ科、マゼランチドリ科
チドリ亜目: ミヤコドリ科、トキハシゲリ科、セイタカシギ科、チドリ科、ナイルチドリ科
ヒバリチドリ亜目: タマシギ科、レンカク科、クビワミフウズラ科、ヒバリチドリ科
シギ亜目: シギ科
ミフウズラ亜目: ミフウズラ科
カモメ亜目: カニチドリ科、ツバメチドリ科、カモメ科、トウゾクカモメ科、ウミスズメ科

これらの分類体系は、絶え間ない研究によってさらに改訂される可能性があります。

過去の分類体系との比較

過去には、現在の分類とは異なる3亜目（チドリ亜目、カモメ亜目、ウミスズメ亜目）や、ツル目に分類されていた2科が存在しました。しかし、これらの分類体系は、最新の分子系統解析に基づいた分類とは一致せず、系統的に不正確であることが判明しています。Sibley & Ahlquist (1990)の分類体系も、現在の分類体系とは異なっています。彼らの分類では、コウノトリ目チドリ亜目チドリ下目Charadriidesがほぼ現在のチドリ目に相当しますが、クビワミフウズラ科を含み、ミフウズラ科は独立したミフウズラ目として扱われていました。

まとめ

チドリ目は、その多様性と複雑な進化の歴史を持つ魅力的な鳥類のグループです。今後さらに研究が進展することで、その系統関係や分類体系に関する理解が深まることが期待されます。

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