イシムチェ(Iximché)
イシムチェは、
グアテマラのチマルテナンゴ県に所在する高地マヤ文明の遺跡です。この遺跡は1470年頃、カクチケル王国の首都として建設されましたが、短い歴史の後に1526年に
スペイン人によって滅ぼされました。
名称と位置
「イシムチェ」という名前は、カクチケル語でおおむね「
ラモンの木」を意味します。スペイン側の記録においては、トラスカラ人が
ナワトル語で「クァウテマラン」と呼んだことから、この言葉が「
グアテマラ」の名称の由来とされています。イシムチェは、標高2260メートルの山地に位置し、テクパンの南2.5キロメートルの地点にあります。
地理的特徴
この遺跡は防御の観点から谷に囲まれた地域に築かれており、類似した地理的特性を持つウタトランと共通点があります。イシムチェは面積が狭いものの、5つの広場(AからEまで、ただしEは未発掘)の周りには160以上の石造建築があります。これらの建物は元々は漆喰で覆われており鮮やかに彩色されていましたが、現在では壁画のほとんどが消失してしまっています。また、建物の設計には中央
メキシコ的な特徴が見られます。
建築物
イシムチェには神殿ピラミッド、球戯場、宮殿といった様々な構造物が存在しましたが、ほとんどの建物の上部は失われています。このことから、建類の形成やその歴史的文脈に対する理解は難しいものとなっています。
歴史的背景
『カクチケル年代記』によると、イシムチェはキチェ王国から独立したカクチケル王国によって1470年代に建設されました。カクチケルは複数の戦争を経てキチェに勝利し、アカハル、チャホマ、ポコマム地域を支配下に置きました。遺跡内にはいくつかの異なるリネージが存在し、建物もそれぞれの氏族によって分かれています。1493年には、権力から排除されたトゥクチェのリネージが反乱を試みますが、これは失敗に終わりました。
1524年にスペインの探検家ペドロ・デ・アルバラードがイシムチェに到着すると、最初は歓迎されました。アルバラードは2000人のカクチケル戦士の助けを借りて、周辺のキチェ王国とツトゥヒル王国を崩壊させ、イシムチェを
グアテマラの最初の首都、サンティアゴとして利用しました。しかし、重税に対するカクチケルの反発を受けて
スペイン人はイシムチェを放棄し、ついには1526年にこの地を焼き払いました。
調査と発掘
19世紀中頃、探検家のジョン・ロイド・スティーヴンズやアルフレッド・モーズリーがイシムチェを訪れた際、当時はカクチケル語で「都市」を意味する「パティナミット」と呼ばれていました。その後1940年代に、土器の研究が進められ、
スイスの考古学者ジョージ・ギユマンが1958年から1972年までイシムチェの発掘を行いましたが、彼は最終報告書を完成させる前に亡くなってしまいました。
参考文献
- - Chinchilla Mazariegos, Oswaldo (2001). “Iximché (Chimaltenango, Guatemala)”. In Susan Toby Evans; David L. Webster. Archaeology of Ancient Mexico and Central America: An Encyclopedia. Garland Publishing, Inc. p. 377.
- - Coe, Michael D. (1999) [1966]. The Maya (6th ed.). Thames and Hudson.
- - Fox, John W.; Smith, Timothy J. (2001). “Iximche'”. The Oxford Encyclopedia of Mesoamerican Cultures. 2. Oxford University Press. pp. 60-61.
- - Kelly, Joyce (1996). An Archaeological Guide to Northern Central America: Belize, Guatemala, Honduras, and El Salvador. University of Oklahoma Press.
- - Robinson, Eugenia J. (2016). “Iximché”. In Walter R. T. Witschey. Encyclopedia of the Ancient Maya. Rowman & Littlefield. pp. 180-182.
- - Witschey, Walter R. T.; Brown, Clifford (2011). “Iximché”. Historical Dictionary of Mesoamerica. Scarecrow Press. pp. 157-158.