イジュームの戦い (2022年)

イジュームの戦い

イジュームの戦いは、2022年ロシアによるウクライナ侵攻中のウクライナ北東部攻勢において、ハルキウ州イジュームの町を巡って発生したロシア軍とウクライナ軍間の激しい軍事衝突です。イジュームは交通の要衝であり、ロシア軍はハルキウ州の部隊とドンバス地域の部隊を連携させるために、この地の制圧を重要視しました。しかし、戦闘は激化し、市街地は甚大な被害を受けました。

戦闘経過

ロシア軍によるイジュームへの攻撃は、2022年2月28日に始まりました。3月3日にはロケット攻撃により民間人8名が死亡、中央病院が大きな被害を受けました。その後、ロシア軍はイジュームへ進軍し、北部郊外に到達。3月6日までに、イジュームの2つの地区とその鉄道駅を支配下に置きました。

3月7日にはロシアメディアがイジュームを制圧したと報じましたが、これは公式には確認されませんでした。翌日には、イジュームの支配を巡り激しい戦闘が勃発し、ロシア軍は一時的に撃退されました。その後も、ロシア軍は徐々に進軍を続け、3月12日にはイジューム北部を制圧しました。

3月15日から16日にかけては、ロシア軍がイジューム南部を占領しましたが、ウクライナ軍は直後に南部を奪還しました。しかし、3月17日には再びロシア軍がイジュームを制圧したと報道されましたが、戦争研究所（ISW）はこれを否定しました。ロシア軍はドネツ川を渡河する際に、ウクライナ軍の待ち伏せ攻撃を受け、進軍を一時停止しました。

3月19日から20日にかけて、ロシア軍はイジューム中心部を制圧しようとしましたが、これも撃退されました。戦闘中、ロシア軍はドネツ川に浮橋を架けようと試みましたが、ウクライナ軍の待ち伏せ攻撃により多くの死傷者を出し、最終的に浮橋を建設して戦車を渡河させることに成功しました。3月22日にはウクライナ軍が反撃を試みましたが、3月24日にはロシア軍がイジュームを完全に制圧したと発表しました。しかし、ウクライナ側は戦闘が継続していると主張し、ロシア軍がイジューム北部を支配し、ウクライナ軍が南部を維持していると説明しました。

3月25日には、ロシア軍がイジュームの南にあるウクライナの戦線を突破したと報じられましたが、ISWはロシア軍が直接攻撃でのイジューム制圧に失敗し、包囲を続ける意向であると分析しました。3月27日には、ロシア軍がカミャンカ村を含む複数の村を制圧しましたが、ウクライナ軍はその後、これらすべてを奪還したと主張しました。しかし、その後、カミャンカはロシアの支配下となり、戦線はスラヴャンスクへの道沿いにイジュームの南へと移動しました。

4月1日、ウクライナ軍はイジュームがロシアの支配下にあることを認めました。イジューム副市長は、市内の住宅の80％が破壊され、電力、暖房、水が利用できない状況であることを明らかにしました。

戦闘後

4月3日、ウクライナ政府はイジュームで毒入りケーキを配ったとされる民間人により、ロシア兵の死傷者が出たと発表しました。4月10日には、ロシア軍がイジュームに集結し、ドニプロへの攻撃作戦を準備しているという情報が報じられました。4月18日には、ウクライナ軍がイジューム地域内の集落を奪還したと主張しましたが、同時にイジューム市民のロシア連邦への大規模な移送が開始されました。

4月下旬には、ロシア軍はドンバスでの攻勢を強化し、イジュームの南と南西に進軍しました。4月27日には、ロシア軍参謀総長ワレリー・ゲラシモフがイジュームに到着し、攻勢を直接指揮していると伝えられました。その後、ゲラシモフは負傷したと報じられましたが、ウクライナ側はこれを否定しました。一方、ロシアのアンドレイ・シモノフ将軍は攻撃により死亡したと主張されています。

2022年9月

2022年9月10日、ハルキウ州でのウクライナ軍の大規模な軍事攻勢を受け、ロシア軍はイジュームから撤退しました。同年9月14日には、ゼレンスキー大統領が出席してイジューム市庁舎に国旗を掲げる式典が行われました。撤退後、ウクライナ側はイジューム郊外で集団墓地を発見し、拷問された形跡のある遺体が多数発見されました。これにより、ロシア軍による戦争犯罪の疑いが浮上しています。

関連項目

イジュームの戦い
イジュームの集団墓地
* 2022年ロシアのウクライナ侵攻における軍事衝突の一覧

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