イスマイル・オマル・ゲレ

イスマイル・オマル・ゲレ：ジブチ大統領

イスマイル・オマル・ゲレ（Ismaïl Omar Guelleh）は、1947年11月27日生まれ。1999年からジブチ共和国の大統領を務めています。初代大統領である叔父のハッサン・グレド・アプティドンから権力を引き継ぎ、進歩人民連合（RPP）の指導者として、同国を長きにわたり統治しています。

政治的経歴と手法

ゲレ大統領は、事実上の一党独裁制を敷く進歩人民連合の下で、安定した長期政権を維持してきました。かつて反政府勢力であった統一民主回復戦線（FRUD）を政権に取り込むなど、政治的手腕を発揮しています。しかし、その強権的な政治手法は国内外から批判されており、人権団体からは独裁者として非難されることもあります。2005年の大統領選挙では唯一の候補者として100%の支持を得て再選、2021年の大統領選挙でも98.58%の得票率で5選を果たしました。

外交政策

ゲレ大統領は、アメリカ合衆国、日本、中国との関係を重視する親米・親日・親中政策を展開しています。2001年以降、フランスとの軍事同盟を継続しつつ、対テロ戦争とイラク戦争を支持し、アメリカ軍の恒久的な駐留を認めました。さらに、日本の自衛隊と中国人民解放軍にとって初となる海外軍事基地の設置を許可するなど、地政学的に重要な位置を占めるジブチの戦略的価値を高めています。

内政と家族の影響力

ゲレ大統領の政権運営においては、家族が重要な役割を果たしています。妻のカドラ・マハムード・ハイドは事実上の副大統領として、娘のファトゥマ・アウォは国のビジネス活動に深く関与しています。また、義理の息子であるジャマ・エルミ・オキエは保健大臣を務めています。大統領の異母兄弟であるサード・オマル・ゲレは、経済的に重要なジブチ港の総支配人であり、いとこのジャマ・アリ・ゲレは国営電力会社ジブチ電力（EDD）の局長を務めています。このように、国家機能と支配一族の関係が密接であるため、ゲレ大統領は警察、軍、その他の治安部隊に対する強力な支配力を背景に、国の政治、経済、司法を厳格に統制しています。2004年にウィキリークスで公開された米国大使館のメッセージでは、ジブチは「イスマイル・オマル・ゲレという一人の男が支配する商業都市国家」と表現されています。

経済政策と課題

ゲレ大統領は、港湾と物流インフラへの海外直接投資（FDI）を推進し、安定した経済成長を達成しました。しかし、その経済はサービス依存型で資本集約型であり、輸出が少なく雇用創出の機会が限られています。2015年の雇用調査によると、ジブチの失業率は39%に達し、生産年齢人口のわずか25%しか雇用されていません。

一方で、多くの先進国との軍事的な同盟関係により、治安の安定化に成功しています。資源に乏しいジブチは、比較的安定した治安を背景に、積極的な外資誘致や中国企業の進出を促進し、経済発展を支えています。ゲレ大統領は、ジブチを「アフリカのシンガポール」にすることを目指しており、人民行動党による開発独裁を見習い、公式演説でもシンガポールの道を辿ることに頻繁に言及しています。

まとめ

イスマイル・オマル・ゲレ大統領は、長期にわたりジブチを統治し、政治的安定と経済成長をもたらしました。しかし、強権的な政治手法や家族による権力集中に対する批判も存在します。地政学的に重要な位置を占めるジブチにおいて、ゲレ大統領の政策は今後も国際社会に影響を与え続けるでしょう。

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