イスラム銀行

イスラム銀行とは

イスラム銀行は、イスラム教の教義であるシャリーア（イスラム法）に基づいて運営される金融機関です。イスラム教では、リバー（利子）を取ることが禁じられているため、イスラム銀行は基本的に無利子で金融取引を行います。この独特な金融システムは、現代の金融市場において重要な役割を果たしています。

イスラム銀行の歴史

イスラム銀行の概念自体は古くからありましたが、近代的な形での設立は20世紀に入ってからです。

1950年代: パキスタンで無利子の農業改善資金貸付が行われましたが、預金者が少なく失敗に終わりました。
1960年代: マレーシアで巡礼貯金公社が設立され、エジプトではミート・ガムル貯蓄銀行が農村開発を目的として成功を収めました。
1970年代: オイルマネーの流入により、ドバイ・イスラーム銀行など商業イスラーム銀行が設立されました。これらの銀行は、近代資本主義型の銀行への預金をためらっていたムスリムから資金を集めることに成功しました。
1980年代: イスラム金融の国際展開が本格化し、パキスタン、イラン、スーダンなどで国内金融システムのイスラーム化が進みました。多国籍企業も設立され、アフリカにも進出しました。
1990年代: イスラム金融に関する問題が発生しましたが、マレーシアではイスラム金融のインフラが整備され、イスラーム銀行の業務が増加しました。また、イスラーム投資ファンドやシャリーア・インデックスも登場しました。
2000年代: 原油価格の高騰によりイスラム銀行は拡大を続け、スクーク（イスラム債）が開発されました。国際市場への参入も本格化し、世界各国に広がりました。しかし、2007年の世界金融危機の影響を受け、世界金融市場から独立していないことが明らかになりました。

イスラム銀行の業務

イスラム銀行は、シャリーアの範囲内で利潤を追求し、現代資本主義の世界に適用することを目指しています。運営には、シャリーア評議会が関与し、金融活動を監督します。具体的な業務においては、以下の契約制度が用いられています。

ムダーラバ: 出資者（ムダーリブ）が事業家（ダーリブ）に全額出資するパートナーシップ契約。利益は契約時の比率で配分されます。
ムシャーラカ: 複数の当事者が共同出資し、事業を共同経営する契約。利益は出資比率に応じて配分されます。
ムラーバハ: ある財を原価よりも高い価格で転売する契約。銀行は手数料を上乗せして利益を得ます。
イジャーラ: 賃貸借契約。銀行が顧客の代わりに設備を購入し、賃料を得ます。
イジャーラ・ワ・イクティナーウ: リース購入契約。賃貸期間後に所有権が顧客に移転します。
サラムとイスティナーウ: 先渡し取引。代金を先に支払い、商品を受け取る契約。
カルド・ハサン: 人道的な無利子ローン。返済時に利息は発生しません。
ワディーア: 財産の保管を請け負う契約で、預金サービスとして用いられます。

イスラム銀行の課題

イスラム銀行は、流動性リスクや流動性ギャップへの対策が必要です。自己資本比率が高く、株主資本利益率が低くなりやすいという課題もあります。また、バイウ・イーナ、コモディティ・ムラーバハ、タワッルクなどの手法がリバー概念に抵触するかという議論も存在します。

将来展望

イスラム銀行の将来展望については、ムスリムと非ムスリムで異なる見解があります。

ムスリムの視点: 無利子経済が有利子経済を駆逐すると考え、無利子銀行が資本主義の搾取システムを変えると期待しています。
非ムスリムの視点: 宗教的情熱だけでは無利子システムの維持は難しく、有利子金融と同程度の業績をあげる必要があると指摘しています。オイルマネーがイスラム銀行の成長を支えている側面もあります。

イスラム銀行は、独自の金融システムを通じて社会経済に貢献する可能性を秘めており、今後の発展が注目されます。

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