イタリアの映画

イタリア映画の歴史における多様な変遷

イタリア映画の歴史は、リュミエール兄弟による映画の発見からわずか数か月後、教皇レオ13世が祝福を受けた瞬間がカメラに収められたことから始まります。この短い瞬間が、映画産業の発展を促すきっかけとなりました。初期のイタリア映画は1903年から1908年にかけて、ローマのチネス社、トリノのアレッサンドラ・アンブロシオ社、イタラ・フィルム社の3大映画会社によって築かれ、以降もミラノやナポリを中心に新たな映画会社が登場し、質の高い作品を国内外で提供するようになりました。

初期のイタリア映画作品は、主に歴史をテーマにしていました。中でもフィロテオ・アルベリーニによる1905年の『La presa di Roma, XX settembre 1870』が初の歴史映画とされています。歴史上の実在人物を扱った映画の中には、ポンペイやマルクス・アントニウス、クレオパトラなどが描かれました。特に1913年に製作されたマリオ・カゼリーニのリメイク版と、エンリコ・グアッツォーニによる『マルクス・アントニウスとクレオパトラ』は当時の注目を集めました。さらに、悲劇に特化した女優たちが「ディーヴァ」として名を馳せ、特にベルティーニは初の映画スターとして記憶されています。

映画界はまた、ファシズムの影響を受けつつも発展を続けました。ムッソリーニ政権下で設立された理事会が映画産業を監督し、チネチッタという映画都市をローマの南東に建設しました。この地には映画製作に必要な施設が整っており、今日でも多くの映画がここで撮影されています。著名な監督たちもチネチッタで自身の作品を残し、国際的な文化交流に貢献しました。

第二次世界大戦の影響を受けて、イタリア映画界ではネオレアリズモと呼ばれる新たな動きが広まりました。初期のネオレアリズモ作品としてアレッサンドロ・ブラゼッティの『雲の中の散歩』が挙げられ、戦後にはロベルト・ロッセリーニがアンナ・マニャーニ主演の作品や三部作を通じて、経済的混乱期の人々の生活を描写しました。いくつかの作品は野外ロケによって現実味が増し、政治的な道具としても機能しました。

1950年代から1960年代には、デ・シーカが作り上げた作品群が再び注目され、『靴みがき』や『自転車泥棒』といった作品が生まれました。彼の映画『ウンベルトD』は、シリアスなテーマと詩的な表現が交錯した力作でありながら、政府からの反発に遭い、商業的には失敗をきたしました。その後のヒット作は、より軽やかなタッチを持ったピンク・ネオリアリズモへと移行していきます。この時代の映画界では、ソフィア・ローレンやジーナ・ロロブリジーダといった女優たちが人気を博しました。

同時期に人気を集めたマカロニ・ウェスタンは、従来の西部劇とは異なり、低予算で製作されながらも個性的な撮影スタイルを持つ作品群が、全世界で愛されるようになります。セルジオ・レオーネ監督による『荒野の用心棒』や『夕陽のガンマン』は、このジャンルを代表する重要な作品です。

1960年代から1970年代には、「ジャッロ」と呼ばれるホラーと犯罪が交差するジャンルが登場し、マリオ・バーヴァやダリオ・アルジェントが著名な作品を生み出しました。一方、1980年代には、イタリア映画界は長期にわたる停滞期を経験し、アート・フィルムの評価が得られつつも主流からは逸れ続けました。

1990年代に入ると新世代の監督たちが登場し、イタリア映画は再生を見せます。ジュゼッペ・トルナトーレの『ニュー・シネマ・パラダイス』やロベルト・ベニーニの『ライフ・イズ・ビューティフル』は国際的な評価を受け、イタリア映画界を復活させる重要な作品となりました。近年では、数多くの作品が国際映画祭でも注目される機会を得ており、イタリア映画の今後にも期待がかかります。

もう一度検索