イトゥリ州

イトゥリ州：紛争と多様性の地

イトゥリ州は、コンゴ民主共和国の北東部に位置し、ウガンダ、南スーダンと国境を接する地域です。広大なイトゥリの森に覆われ、豊かな自然に恵まれていますが、同時に紛争が絶えない地域でもあります。

地理と植生

イトゥリ州は、コンゴ川の支流であるアルウィミ川の上流、イトゥリ川の流域に位置しています。州の西部には広大なイトゥリの森が広がっており、多様な植物が生育しています。北東部にはムヒンビ、南西部にはリンバリ、そしてその間の移行帯にはボマンガといったマメ科の高木が原生林を形成しています。一方、東部には開けた土地が広がっています。

民族と文化

イトゥリ州には、バントゥー系とスーダン系の農耕民が混在して暮らしています。州の中心部にはビラ、ンダカ、レッセといった民族が居住し、それぞれ独自の言語と文化を持っています。また、狩猟採集民であるムブティは、周辺の農耕民と交流し、彼らの言語を話します。中南部には遊牧民のヘマも暮らしており、地域の共通語はコンゴ・スワヒリ語です。このように、イトゥリ州は多様な民族と文化が共存する地域です。

紛争の歴史

イトゥリ州は、豊富な資源を巡り、長年にわたって紛争が続いています。特に、アルバート湖周辺の石油や金などの資源は、ウガンダやルワンダなどの周辺国も巻き込む紛争の火種となってきました。2度のコンゴ戦争を経て、ウガンダ軍がヘマを優遇し、レンドゥを襲撃するなど、イトゥリ紛争と呼ばれる争乱が激化しました。

イトゥリ紛争は、ヘマとレンドゥの土地利用をめぐる対立も背景にあり、約5万人の死者と多くの難民を生み出しました。2000年代前半には沈静化しましたが、2018年には再び衝突が活発化し、現在も不安定な状況が続いています。襲撃の噂が立つたびに、多くの人々が州都ブニアの難民キャンプや教会に避難し、アルバート湖上へ一時的に避難する事態も発生しています。

現在の状況

国際連合人道問題調整事務所（OCHA）の報告によると、イトゥリ州を含むコンゴ民主共和国東部では、民主同盟軍（ADF）をはじめとする約120の反政府勢力が活動しています。2021年5月6日以降、イトゥリ州は北キヴ州と共に反政府武装勢力を鎮圧する名目で軍と警察に完全な権限が与えられ、事実上の戒厳状態にあります。しかし、この措置は紛争の鎮圧に効果があったとは言えず、民間人の殺害件数は増加しています。

衛生状態

イトゥリ州では、2000年代においてもペストの発生がWHOに報告されています。衛生状態は依然として深刻であり、感染症の蔓延も懸念されています。

イトゥリ州は、豊かな自然と多様な文化を持つ一方で、紛争と貧困に苦しむ地域です。紛争の根絶と持続可能な開発が、地域の安定と発展のために不可欠です。

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