イブラーヒーム (アフシャール朝)

イブラーヒーム（生年不詳 - 1749年）は、18世紀のアフシャール朝において、わずか一年足らずの間、王位を保持した人物です。彼は第2代君主アーディル・シャーの実弟として生まれました。

兄アーディル・シャーが王位に就くと、イブラーヒームはイスファハーンの治安維持を任されます。しかし、この地で力を蓄えたイブラーヒームは、兄に対して反旗を翻します。1748年、彼は兄を盲目にして廃位させ、自らが王位に就くという強硬手段に出ました。

しかし、イブラーヒームの王位簒奪は、アフシャール朝内部に深刻な対立を生み出します。ホラーサーン地方の有力者たちは、イブラーヒームの即位を認めず、ナーディル・シャーの孫であるシャー・ルフを擁立し、イブラーヒームに対抗しました。シャー・ルフはナーディル・シャーの血統を引く正当な後継者として、彼らの支持を集めたのです。

国内の支持を得られず、正当性も確立できなかったイブラーヒームは、王位を維持することができませんでした。シャー・ルフを支持する勢力の台頭により、彼は退位を余儀なくされます。そして、1749年、イブラーヒームは兄アーディル・シャーと同様に、ナーディル・シャーの妻の命令によって処刑されました。短期間の在位の後、非業の死を遂げたのです。

イブラーヒームの生涯は、アフシャール朝の混乱期における権力闘争の激しさを象徴しています。彼は、兄を裏切り王位を奪取しましたが、その正当性を認められず、最終的には悲劇的な結末を迎えることとなりました。彼の事例は、権力への野望と、それを実現するための手段がもたらす代償について、深く考えさせられるものがあります。

参考文献
* 『ムガル帝国歴代誌』（創元社）

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