イブラーヒーム・シャー

イブラーヒーム・シャーの生涯とその影響

イブラーヒーム・シャー（生年不詳 - 1567/8年）は、北インドにおけるスール朝の第5代君主であり、その短い治世は数々の戦争と政治的変動に彩られています。彼は1555年に王位を獲得しましたが、その時の状況は非常に不安定でした。彼は、前君主イスラーム・シャーの娘婿として、その血筋を背景に持っていました。

1554年末、イスラーム・シャーが亡くなり、その息子であるフィールーズ・シャーが王位を継承しました。しかし、フィールーズ・シャーはわずか一ヶ月後に、ムハンマド・アーディル・シャーによって暗殺されるという事件が起きました。このような状況は、イブラーヒーム・シャーが権力を握るための大きな舞台となることとなりました。

彼の反乱は1555年に起こり、アーディル・シャーが統治するデリーを占拠しました。イブラーヒーム・シャーは、アーディル・シャーの姉妹の夫であったことから、権力を奪取するために軍を動かしました。しかし、彼の勝利は長続きせず、すぐにシカンダル・シャーの軍に敗北し、デリーから追われてしまいます。これにより、イブラーヒーム・シャーは権力の座から遠ざけられることとなりました。

その後、アーディル・シャーは東部へ逃れますが、イブラーヒーム・シャーもまた、逃げた先で彼を追い詰めようとします。彼はヘームーという人物によって、カールピーとカーンワーで二度にわたり敗北を喫し、最終的にはバヤーナーの城に逃げ込むことになります。バヤーナーでの籠城生活は厳しいものであり、ヘームーは城を包囲することとなります。

幸運なことに、ムハンマド・ハーン・スーリーがカールピーに接近してきたため、ヘームーはその包囲を解かざるを得なくなり、それによってイブラーヒーム・シャーは救われることになりました。しかし、この逃避行は彼の権力を完全に回復する道筋にはならず、彼は最終的にはオリッサ方面へと逃れます。1567年から1568年の間に彼は亡くなったと言われています。

イブラーヒーム・シャーの短い統治期間は、多くの戦争と権力闘争の中で発展しました。彼の統治は、スール朝における権力の変遷を示す重要な一幕であり、後の時代に影響を与える歴史的な出来事でした。彼の人生は、時代に翻弄された君主の象徴とも言えるでしょう。彼の数々の戦いと、迫害の物語は、北インドの歴史における興味深い一ページを形成しています。

参考文献

• - サティーシュ・チャンドラ 著、小名康之、長島弘 訳『中世インドの歴史』山川出版社、2001年。
• - フランシス・ロビンソン 著、月森左知 訳『ムガル皇帝歴代誌 インド、イラン、中央アジアのイスラーム諸王国の興亡（1206年 - 1925年）』創元社、2009年。

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