北インド

北インド：多様な文化と歴史の織りなす地域

北インドは、インド亜大陸の北部地域を指す地理的概念です。ヒンドゥスターンと呼ばれることもあり、その範囲は文化圏として捉える場合、現在のインドだけでなく、パキスタン、バングラデシュ、ネパールにも広がります。一方で、インド国内においても、南インドや北東インドは必ずしも北インドに含まれるとは限りません。

地形と気候

北インドの地形は、広大なヒンドスタン平原が特徴です。気候は多様で、温帯夏雨気候、熱帯サバナ気候、乾燥帯ステップ気候など、地域によって大きく異なります。ヒマラヤ山脈のような高地では、高山気候も見られます。この多様な地形と気候が、豊かな生態系と多様な文化を生み出しています。

民族と言語

北インドの人々は、主にインド・アーリア人を祖とする民族が居住しています。言語は、サンスクリット語を起源とするインド語派の言語が広く話されており、ヒンディー語とウルドゥー語を同一視するヒンドゥスターニー語が共通語として機能しています。ボリウッド映画で使用される言語も、このヒンドゥスターニー語です。

しかし、ベンガル語、パンジャーブ語、マラーティー語など、サンスクリット語を起源とする他の言語を母語とする人も多く存在します。また、サンスクリット語を起源としない言語を話す少数民族や、英語を母語とする人もいます。言語的多様性も、北インドの特徴と言えるでしょう。

歴史と宗教

古代

古代北インドでは、十六大国と呼ばれる多くの国々が覇権を争いました。宗教的には、カースト制度に基づくバラモン教が支配的な立場にありました。しかし、バラモン教への批判から仏教とジャイナ教が生まれました。マガダ国のマウリヤ朝、特にアショーカ王は仏教を保護しましたが、その後、バラモン教は土着信仰を取り込みヒンドゥー教へと発展し、グプタ朝やヴァルダナ朝の時代にはヒンドゥー教が優勢となりました。仏教は密教化しましたが、最終的にはヒンドゥー教に吸収されるか、チベットに移りチベット仏教を形成しました。

中世・近世

中世には、ガズナ朝、ゴール朝、デリー・スルターン朝、ムガル帝国といったイスラーム王朝が台頭し、北インドのイスラーム化が進みました。ムガル帝国時代には、ヒンドゥー教とイスラーム教の両方の影響を受けたシク教がパンジャーブ地方で誕生しました。

近世・近代・現代

西欧諸国の進出は、ポルトガルのゴアへの進出から始まりましたが、1757年のプラッシーの戦い後、イギリス東インド会社はベンガル地方からインドへの支配を拡大していきました。1857年のインド大反乱を経て、イギリス東インド会社は解散し、イギリス領インド帝国が成立しました。これは、漠然と「インド」と呼ばれていた地域を初めて統一した政体でした。

1885年に結成されたインド国民会議は、マハトマ・ガンディーやジャワハルラール・ネルーらの指導の下、インド独立運動を推進しました。非暴力・不服従の運動とともに、スバス・チャンドラ・ボースのような急進派や、カースト制度の撤廃に尽力したビームラーオ・アンベードカルらの活動も重要でした。しかし、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒の対立は解決せず、1947年のインド独立はインドとパキスタンの分割という結果となり、ガンディーの理想は実現しませんでした。現在も、シク教、キリスト教、仏教、ジャイナ教などの信者が少数ながら存在しています。

南北インドの差異

海外では、インドといえば北インドの事物（例えばタージ・マハル）がまず連想されることが多いです。そのため、「北インド」という言葉は、言語や文化において大きく異なる南インドと対比して用いられる場合もあります。ウィキペディアの言語版数も、南インドの方が多いという事実からも、この差異が見て取れます。料理や食文化も、北インドと南インドでは大きく異なっています。

現在のインド政府による北インドの定義

インド政府内務省は、地域間の発展、融和、協力を目的として、インドを北、南、東、中央、西、北東の6つの地域に分類しています。北インドには、ジャンムー・カシミール州、ヒマーチャル・プラデーシュ州、ウッタラーカンド州、ハリヤーナー州、パンジャーブ州、ラージャスターン州、ウッタル・プラデーシュ州、ビハール州、ジャールカンド州、チャッティースガル州、マディヤ・プラデーシュ州、チャンディーガル、デリー首都圏が含まれます。

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