イムリ

イムリ

『イムリ』は、三宅乱丈による日本のSFファンタジー漫画作品です。『コミックビーム』(エンターブレイン)にて2006年8月号から2020年8月号まで連載されました。本作は、第13回(2009年)文化庁メディア芸術祭マンガ部門において優秀賞を受賞し、2018年7月時点で累計発行部数は100万部を記録しています。

概要

物語は、二重惑星マージとルーンを舞台に、カーマ、イムリ、イコルの三種族を巻き込んでいく星間戦争を、カーマの少年デュルクの視点を通して描かれます。作品の特徴は、カーマに伝わる「侵犯術」を描く超能力フィクションであると同時に、主人公デュルクの冒険を描く英雄譚、そして支配民カーマの権力者たちが織りなす血みどろの宮廷劇と、先住民イムリの諸部族の文化を民族誌のように詳細に描いている点です。

あらすじ

惑星マージの支配種族であるカーマは、精神を操作する「侵犯術」を操る呪師を頂点に、奴隷種族イコルを最下層とする厳格な階層社会を形成しています。長い氷期を脱したカーマは、隣星ルーンへの再入植を開始します。カーマの呪師候補生であるデュルクは、政争に巻き込まれ、反逆者として原住民族イムリの間に逃れることになります。そこで古代戦争の秘密を知ったデュルクは、イムリのカーマに対する抵抗運動に巻き込まれていきます。

登場人物

呪師系

デュルク: カーマの権力者層「呪師衆」の家に生まれ、寄宿学校に入学したばかりの新候補生。エリートとして育てられ、世間知らずな面もありますが、常に他人への思いやりを欠かさない心優しい性格です。ルーンの夢を見るなど、普通のカーマにはない現象が見られます。
ラルド: 強力な彩輪を持つ覚者。候補生時代は成績優秀でしたが、ある事情から昇進が止まっています。カーマ社会に蔓延する閉塞感を憂いており、デュルクに強い期待を寄せています。
イマク: ラルドに仕える呪仕。温和な性格で、辛く当たりがちなラルドをフォローする役割を持っています。
オレイグ: デュルクの父で、呪師衆の一員。デュルクに対し、定期的に促迫をかけて思想調査を行っています。
ピアジュ: デュルクの母。特殊な「夢」を見る能力を持っています。
ミューバ: デュガロの養女。デュルクと瓜二つの顔を持ち、デュルクの夢の中にたびたび姿を現していました。デュルクに思慕の念を募らせています。
デュガロ: ルーン星の大師の一人。ルーンにおける呪師系のリーダー格であり、デュルクに期待をかけています。
ガラナダ: デュガロの部下である呪師。元従師で軍略にも長けており、デュガロの懐刀として活躍します。
ガヴィド: 寄宿学校でデュルクと同室になった候補生。郡民の家出身で、出自にコンプレックスを感じています。
ドネーク: 寄宿学校の上級生。父親が呪師衆であることを利用し、下級生をいびることを趣味としています。
賢者: 名目上はカーマの最高権力者ですが、呪師系の傀儡として育てられています。
トパロ: 浄化師長。抗体の研究をさせるため、デュガロの城で軟禁状態にされています。
ゾルヴァグ: ゾンヌルグ大師の息子。デュルクを危険視し、抹殺を企てます。

軍事系

ババド: ルーンの軍隊師。短気な性格で、階級が下の者に当たり散らしています。
バニエストク: 軍事系の頂点である大大師。ルーンの実権を呪師系に渡すことを良しとせず、クーデターを画策します。
ドルガン: 軍事系の大師。慎重な性格で、万が一の際の策を欠かしません。

イムリ

旅のイムリ: イムリ大陸を旅して歩く旅人。警戒心が強いですが、心を開いた相手には協力を惜しみません。本名はドープ。
入り江のイムリ: 入り江の村のイムリ。旅のイムリとは旧知の仲です。

用語

カーマ: 支配民族。「侵犯術」によって強固な身分階級制度を布いています。
イコル: カーマにおける階層社会の最下層を構成する奴隷民族。
イムリ: ルーンの原住民。必ず双子で生まれるなどの特徴があります。

地理

マージ: ルーンの隣星。古代戦争以降、カーマが移住しその居星となりました。
ルーン: かつてカーマの母星であった星。星全体が凍結しましたが、近年氷が溶け始め、カーマの帰還が進みつつあります。

光彩・彩輪

光彩: 全ての物質が持っているエネルギー。
彩輪: 生物が持っている、強化可能な「光彩」の総称。
侵犯術: 強化彩輪を使って他者の精神を操る技術。

舞台化

2017年7月には舞台化もされています。

もう一度検索