イヤなイヤなイヤな奴

イヤなイヤなイヤな奴

『イヤなイヤなイヤな奴』は、藤子・F・不二雄（当時は藤子不二雄名義）によって描かれた読切漫画で、1973年に『ビッグコミック』4月10日号に掲載されました。この作品は、SF短編集『異色短編集』第4巻にも収められ、多くの読者に親しまれてきました。物語は、宇宙船レビアタン号での長期間の航行を舞台に、過酷な環境下での人間関係の軋轢を描いています。

あらすじ

舞台設定

レビアタン号は、宇宙空間に航行中で、560,000トンものゼム油を積んで地球へ帰る途中です。船内には船長と5人の船員が生活しており、彼らは長期にわたって閉ざされた環境の中で共同生活を強いられています。このような状況では、精神状態に異常をきたすことが避けられず、些細なことから仲間割れや反乱、暴動が引き起こされることが多くなります。

物語の展開

任務自体は順調に進んでいるものの、クルーたちのストレスは蓄積されていきます。特に生真面目な航宙士キヤマと短気な機関主任ヒノの間には明らかな対立が生じており、小さなことで言い争いが勃発していました。そんな中、船員ミズモリが現れ、彼の行動がさらにクルーの不和を煽る結果になります。

ミズモリは、独特の言動や賭博を楽しむ性格から、全員から「イヤな奴」として嫌われており、その存在が船内の雰囲気を一層悪化させていました。やがて、彼の挑発的な行動はエスカレートし、クルーの賭博を本社に通報したり、検討中の三次元クロスワードを勝手に解くなど、限界を超えた行動に出ます。

ヒートアップする状況

ミズモリはついには機関室に閉じこもり、原子炉を占拠するという暴挙に出ます。クルーたちは彼を監視し、協力してこの脅威に立ち向かおうとします。それまで対立していたキヤマとヒノも、ミズモリという共通の敵の前で力を合わせることになります。彼らの憎しみ合いは一時的に忘れられ、団結が生まれるという皮肉な展開が見られます。

結末と新たな視点

最終的に、レビアタン号は地球に無事到着しますが、ミズモリは逮捕されることなく、ニホン宙運の本社で役員から報酬を受け取ります。実は彼は「にくまれ屋」と呼ばれるビジネスを営んでおり、敵役を演じることで人々を結束させる手法を用いていたのです。物語はここで、人間関係の複雑さ、共通の敵がもたらす連帯感についての示唆を残します。

登場人物

• - ミズモリ: 船の整備士で、周囲から嫌われている。賭博が得意で皮肉な笑いを絶やさない。
• - キヤマ: 船長の信任を受ける航宙士。生真面目な性格で、ヒノと衝突しやすい。
• - ヒノ: 短気な機関主任で、キヤマとの対立が目立つ。
• - キンダイチ: 通信士で、穏やかだがキヤマに従っている。
• - 船長: クルーの人間関係を管理しようとするが、疲労からミスが目立つ。

この物語は、藤子・F・不二雄の独特の視点から描かれており、閉鎖された空間における人間の本質や絆がどのように形成されるのかを考えさせられる内容となっています。また、2023年には実写ドラマ化もされ、多くの新しいファンを獲得しています。

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