イヤード・アッラーウィー

イヤード・アッラーウィー

イヤード・アッラーウィー（Iyād ʿAllāwī、1944年5月31日生まれ）は、イラクの主要な政治家の一人です。特に、イラク暫定政権において政務の最高責任者たる首相を務めたことで知られています。報道では一般的に「イヤド・アラウィ」と表記されることが多い人物です。政党連合「イラク国民運動」の代表を務め、イラク共産党系のイラク国民リストに参加する「イラク国民合意（INA）」の指導者でもあります。

サッダーム・フセイン体制が崩壊する以前、アッラーウィーはアメリカと連携する反体制派の代表的な存在でした。INAは、イラク中部のスンナ派出身者が中心となっている組織とされていますが、アッラーウィー自身はシーア派に属しています。

来歴

1944年に生まれたアッラーウィーは、王政時代に保健大臣を務めた父親を持つ家庭に育ちました。彼は世俗的なエリートであり、イギリスで医学教育を受け、医師としての経歴を持っています。政治の世界では、1960年代からバース党の活動に参加していましたが、1970年代後半になると、バース党内で指導的な地位を確立したサッダーム・フセインとの間に深い確執が生じ、バグダードを離れることになります。この時期、ロンドンに滞在していたアッラーウィーは、1978年に正体不明の襲撃を受けて負傷しました。これは、サッダーム政権の工作員による暗殺未遂と広く認識されています。

1990年、アッラーウィーはイラク国外で、軍や警察機関の反体制派を中心とするイラク国民合意（INA）を創設しました。INAはヨルダンのアンマンを拠点とし、アメリカ中央情報局（CIA）の支援を受けながら、軍事クーデターによるサッダーム政権打倒を目指して活動しましたが、期待された成果を上げられず、アメリカ当局との関係が疎遠になりました。これにより、親米派反体制組織の中心的な地位は、アフマド・チャラビー率いるイラク国民会議に譲ることになります。

2003年のイラク戦争によりサッダーム政権が崩壊すると、アッラーウィーはイラクに帰国しました。彼はイラク統治評議会に参加し、同年12月には持ち回りで選出される評議会議長の一員として職務にあたりました。また、統治評議会の安全保障委員会委員長を務めるとともに、治安関連省庁にも自身に近い人物を配置し、占領下の治安行政に一定の影響力を行使したと考えられています。2004年4月には、アメリカ軍によるファルージャ攻撃に抗議して安全保障委員会委員長を辞任しましたが、アッラーウィーはINAの親米的な成り立ちから、評議会内でも特に親米姿勢が目立つ人物と見なされ、敵対勢力からはしばしば「アメリカの傀儡」と非難されました。

2004年5月28日、イラク統治評議会によってイラク暫定政権の首相に選出され、同年6月2日に暫定政権が発足すると同時に首相の座に就きました。6月28日にイラクに主権が移譲された後の政務最高責任者として、彼は治安対策の強化を最優先課題に掲げました。

また、首相として、旧バース党員の公職追放措置を緩和し、旧体制下の公務員や軍・治安機関の幹部を積極的に登用する政策を進めました。しかし、これらの政策は、旧政権下で抑圧されていたシーア派やクルド人の勢力から強い反発を招きました。

2004年、ベルリン訪問中に、イスラム過激派とみられるラフィク・ヨセフによる暗殺未遂事件に遭遇しています。

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